韓国でいちばん有名な猫、ヒックのフォトエッセイ「しあわせはノラネコが連れてくる 」
韓国でいちばん有名な“ふつうの猫”として注目を集めている、ヒックのフォトエッセイ『しあわせはノラネコが連れてくる』が3月30日に文藝春秋より刊行されます。
本書は、自分探しを続ける孤独な著者が一匹のノラネコと出会い、様々な価値を見出していく様子を描いた心温まるエッセイ・ノンフィクション。
アラサー、独身、定職なし。
大学を卒業したものの定職に就けず、やりたいことも見つからず、親からのプレッシャーも日に日に増すばかり…。 息苦しい毎日から逃げるようにやって来た済州島(チェジュとう)で白いノラネコに出会い、交流していくうちに、著者の人生が動き出す。
韓国語で「ぼんやりと白い」という意味の「ヒックムレハダ」から連想して〝ヒック〟と命名。 ヒックと「家族になる」ことを決意した著者は自立するべく奮闘し、自分なりのやり方で、自分なりの幸せを見つけていく。
<目次>
第1章 白いノラネコ
第2章 一緒に暮らそう
第3章 私たちの家
第4章 新しい日々
第5章 ヒックの特徴紹介
第6章 君がいるから
著者は、韓国の人気リゾート地として知られる済州島の東部にあるオジョリ村で、小さなゲストハウスを営んでいるイ・シナさんという女性。
大学卒業後、就職が決まらずしばらく放浪していたものの、済州島のゲストハウスでスタッフとして2年間働くことに。その頃に出会ったのが白猫のヒックで、里親になることを決意したシナさんは木造の一軒家を借りて一緒に暮らし始め、ゆるゆるとした日常写真をインスタグラムのアカウント(@sina_heek)に投稿しはじめると、ふくよかなボディと愛くるしい仕草に魅了される人が続出してフォロワーが急増。
ヒックと出会い家族として過ごしてきた3年間の記録をつづった韓国版の原書は「かわいくて癒される」「涙が出た」と話題を呼び、発売直後(2017年10月第4週)に韓国大手書店「KYOBO文庫」で週刊総合ベストセラー1位を獲得。
翌年には韓国ネット書店「Aladin」の「2018年の本」で第3位に選ばれるなど、韓国では動物の本として異例のロングセラーを続けています。
日本では長らく続く猫ブームの影響もあり、このような猫本が人気を博すことはそれほど珍しくありませんが、なぜ韓国の読者から共感を得ているのか、出版元を通じて本書の編集者や翻訳者の方にうかがってみました。
「日々勤勉であることや競争を求められ疲れた人たちが、平凡だけれど幸せそうに生きるヒックの姿に、とにかく癒やされているのかなと思います。もっちりボディにモフモフの白い毛、ピュアさと円熟味の両方を感じる眼差し、ぶんぶんと音が聞こえそうな太いしっぽなど、ヒックのルックスには人を和ませる力があります。
それゆえインスタグラムのフォロワーは19万人を超えていますが、この本ではそんなヒックがもともとは痩せて怪我をしたノラネコで、毎日に疲れ将来に希望を持てないでいたイ・シナさんと出会い、保護されたことで温かい日々が訪れたという経緯が明かされ、さらに大きな反響がありました。
また、韓国の出版元代表によると、読者からのコメントには序章に2人の出会いが綴られているためか「最初から泣いた」という感想がとても多いそうです。ささやかだけれど温かい家庭を築いていく様子が、韓国でムーブメントとなっている「小さいけれど確かな幸せ」を見直す動きと関係しているのかもしれません。」
(文藝春秋社)
そんな本書にはエッセイの項目ごとにたくさんの写真が散りばめられていて、眺めているだけでも癒やされそうなショットが全160ページにわたって掲載。本記事ではその一部を紹介します。
第3章 私たちの家
こちらはちょっぴりブサカワな写真。
日々、ヒックの写真をインスタグラムにアップしていると「飼い主は変顔をあげすぎじゃないか」「イメージダウンでは」などの声が寄せられるそうですが、シナさんは口元が緩みきって糸切り歯がはみ出ているこの寝顔についても「ものすごくかわいいとしか思えない」と語るなど、飼い主あるあるな親バカっぷりを発揮しています。
第4章 新しい日々
のどかな風景を背に、のびのびと過ごしているヒックの姿も印象的。
「元ノラネコだから、庭や畑で思いきり遊べるように…」との思いで庭付き・畑付きの一軒家を借りたシナさん。畑でとれたサツマイモを背にどろんこの足を見せる写真に「足だけシャム猫」、庭でご飯を食べる写真には著名な米ライフスタイル誌・KINFOLK(キンフォーク)になぞらえて「猫版KINFOLK」というコメントを添えるなど、スローライフを満喫している様子もうかがえます。
第5章 ヒックの特徴紹介
中には人間用の枕をしっかりと使いこなしているかわいい寝姿も。
いつもはヘソを丸出しで眠るというヒックですが、たまに大の字で寝たりシナさんが腕枕をするのと同じように、片方の前足を伸ばして寝ることもあるのだとか。
本書にはその他にも、ヒックの日常を捉えた可愛らしい写真がオールカラーで128点も掲載されています。
インスタグラムや書籍を通じて多くの人々に親しまれ、韓国でいちばん有名な「普通の猫」として知られるヒックのフォトエッセイ。
日本の読者にはどんな点に注目してほしいか出版元に聞いてみました。
「どんな猫ちゃんと飼い主さんにも出会いがあり、ふたりだけの物語があると思います。韓国の済州島で出会ったヒックとシナさんの物語は「誰かと誰かが出会い、家族になった話」として普遍的なもので、一緒に暮らし始めた頃の戸惑いや失敗、ささやかなエピソードのひとつひとつに共感できるのではないかと思います。」
(文藝春秋社)
書籍は2020年3月30日(月)より、全国の書店などにて発売される予定となっています。
参考:猫のように生きるのニャ!元ホームレスの男性が野良猫から学んだ教訓本「ボブが教えてくれたこと」
(c)イ・シナ『しあわせはノラネコが連れてくる』
画像提供:BUNGEISHUNJU LTD.