横尾忠則は愛猫の死にどう向き合ったのか?91点の肖像画でつづった画文集「タマ、帰っておいで」

日本を代表する美術家・横尾忠則氏による、亡くなった飼い猫への愛を描いた画文集『タマ、帰っておいで』が4月1日に刊行されました。

横尾忠則が亡くなった飼い猫への愛を描いた画文集『タマ、帰っておいで』の表紙
表紙イメージ

横尾氏は1960年代からグラフィックデザイナーとして活動。

色鮮やかで革新的なデザインのポスターや装丁が注目を集め、72年にグラフィックデザイナーの作品として初めてニューヨーク近代美術館で個展を開催。パリやワルシャワなど各国の芸術祭に出品して多くの賞を受賞しているほか、45歳の時には『画家宣言』を行い美術家に転向。

オランダ・アムステルダムのステデリック美術館、フランス・パリのカルティエ財団現代美術館における個展など、海外で新作を発表することも多く、その作品は国内外で高く評価されています。

横尾忠則の近影
横尾忠則 (Tadanori Yokoo)

そんな横尾氏は大の愛猫家。

彼のTwitterやブログにたびたび登場していたグレートビ(グレー地×トビ柄)の猫「タマ」は、ファンなら誰もが知っている存在で、その溺愛ぶりも有名。ノラ猫として庭先に現れてから15年の間、家族の癒しとなり心の支えとなってきました。

しかし、2014年5月31日、人間の年齢に換算すると100歳近かったタマは老衰のため死去。すると横尾氏はその当日にタマの死顔を、その後も供養としてタマの肖像画を1枚1枚描き始めます。


当時、タマを失った悲しみや孤独は、Twitterでも綴られており、そのつぶやきは多くの反響を呼びました。

「タマの死がぼくに何かを終らせたような気がする。そして次なるゾーンに向かおうとしているのだろうか。今は何もわからない。」
(2014年6月2日)

「タマは何をしにわが家を選んできたのだろう。われわれの精神と生活に奉仕するためだったのだろうか。こちらはタマに何を奉仕してやったというのだ。」
(2014年6月2日)

「死んだ猫のタマへのレクイエムを描いているけれど、アートとしてではなく、供養画だから評価の対象外だ。」
(2014年6月25日)

本書は、そんなタマが亡くなったその日から、ただひたすら描いたという愛猫の肖像画、全91点を収録した画文集。

横尾忠則と愛猫タマの肖像画 by タマ、帰っておいで

絵には1枚ずつ創作日が記されているため、どのような思いをその時々で感じて表現してきたのか、時系列で追えるようになっていほか、タマの生前から亡くなった後の2018年までに、横尾氏が折に触れて綴ったタマに関する文章や日記なども掲載。愛猫を亡くした喪失感、寂しさ、感謝の気持ち、楽しかった思い出などが切々と伝わってきます。

作品として描いてきた絵ではないものの、今年タマの七回忌を迎えることをきっかけに出版を決意したという本書。愛猫を失った画家がペットロスとどのように対峙したのか、「愛」とは、「生きる」とは、「死」とは、いったい何かを問いかける、そんな一冊となっています。

また、東京・日本橋にあるギャラリーでは、横尾氏が愛猫タマを描いた約100点の絵画作品を展示する企画展を開催。

当初は2020年4月1日(水)〜5月23日(土)にかけて予定されていましたが、新型コロナウイルス感染症の予防・拡散防止のため延期が決定しており、開催時期についてはギャラリーの公式HPで今後告知するとしています。

<企画展概要>
名称:「横尾忠則 REQUIEM タマ、帰っておいで」
   Tadanori YOKOO REQUIEM for TAMA
会場:西村画廊 NISHIMURA GALLERY 
住所:東京都中央区日本橋2-10-8 日本橋日光ビル9F
<書誌情報>
書名:タマ、帰っておいで
頁数:156ページ
寸法:182mm×182mm
発行:講談社

(C) Kodansha Ltd.

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