2月末まで開催中の『飼い主のいない猫写真展』、10年間にわたって猫を撮り続ける撮影者の思いに独占インタビューで迫る

猫は私たち人間にとって身近な動物。SNSでは人間のお家で暮らしている幸せそうな猫たちの写真が溢れていますが、その一方で飼い主のいない猫も多く存在します。

東京・府中駅の近くにあるギャラリーで現在行われている『飼い主のいない猫写真展』も、そんな猫たちの存在にスポットライトを当てた写真展。

原っぱで天を仰いで手を伸ばす野良猫 by Canary Watanabe
メインビジュアル(写真提供:Canary Watanabe)

撮影者の渡邉果菜里さんは2012年から個人で猫の保護活動や犬のシェルターのボランティアを開始。2022年に府中市飼い主のいない猫協力団体「せぴうるにゃん府中」を設立し、これまでに60頭以上の猫を保護したり里親探しなどの活動を行ってきた一方で、猫たちを一眼レフカメラで撮影する活動も10年ほど続けています。

本展では渡邉さんが撮影してきた飼い主のいない猫たちの写真19点を展示。各作品にはキャプションやストーリーボードが添えられていて、写真に写っている子がどんな猫生を歩んだのか、撮影者の目にどのように映ったかが書かれているため、ビジュアルだけでなく被写体である猫たちの背景をリアルに感じられる展示内容となっています。

Canary Watanabe(渡邉果菜里)さんの猫写真展 展示風景
会場の展示風景

Cat Press編集部では撮影者の渡邉さんに、写真展や自身の活動について詳しい話を聞いてみました。

――今回の写真展を開催することになった経緯について教えてください。
『猫の保護活動に使う資金を集めるために以前作った「こねこフォトブック」を見ていただいた方から共感いただき、誘って頂いたのがきっかけです。当初は今月の22日〜23日に開催される猫イベント「にゃんにゃんフェスタ2024」の出展者の一人として作品を展示する予定だったのですが、個展としてやらせていただけることになりました。』

――保護猫の写真を撮り始めたきっかけは何だったのでしょうか?
『私が初めて本格的に猫を保護した頃は、里親募集サイトに情報を載せても閲覧数が全然伸びなくて、里親申込みのお問い合わせもゼロでした。そんな折、知り合いのカメラマンの方から「里親募集用の写真くらいだったらチャチャッと撮るよ」と仰っていただきました。

我が家に来ると、確かに手短に撮影して帰られたのですが、後から送られてきた写真はまるで写真館で撮ったようなプロの仕上がり具合。早速サイトの写真を差し替えてみたところ、あれよあれよという間に5匹の里親が決まったのです。それを見て、「私もこんな風に里親募集用の写真を素敵に撮れる写真家になりたい!」と思ったのが、一眼レフカメラを手に取ったきっかけでした。』

ニオイを嗅ぎ合う猫たち by Canary Watanabe
ご挨拶中のニャンコ

――現在はどのような思いで撮影を続けているのですか?
『それからというもの、私はひたすら猫にカメラを向けてはシャッターを切り続けてきました。猫の保護施設は屋外で動物を撮る場合と違い、室内だったり天候が悪かったり多少暗かったりして撮影条件が整わないことが多く、犬や他の動物に比べて難しいと感じました。また、カメラを警戒する子も少なくありません。それでも素敵な写真に仕上がらない猫はいないと思っています。いつか保護活動なんて必要が無くなるまで「写真のお陰で里親様が決まった!」という経験をひたすらに増やしたくて、今も修行を続けています。

実際、里子に出た子達が幸せそうにしている姿を見たり、幸せなエピソードを聞いたりするのが私にとって一番モチベーションが上がります。保護活動は辛いことが多いですが、猫は幸せになる片道切符を全員必ず持っていると思うことが多々あるので、幸せなご報告を聞くのが一番嬉しいですし、今後の活動の励みになっています。』

気持ち良さそうに伸びをする茶トラ猫
気持ち良さそうに伸びをする猫

――作品を見る際にはどのような点に着目して欲しいですか?
『「かわいい」だけじゃない、「かわいそう」だけじゃない、一匹一匹の生きた証を展示するつもりで「かわいい」写真を選びキャプションを付けました。写真は私の目に映ったかわいいかわいい猫たちの姿そのままですが、写真の裏にあるストーリーに少しでも心動かされる瞬間が作れたら…と思っています。逞しく、美しく、時に儚い猫たちの姿をぜひご覧ください。』

今回、インタビューに応じてくれた渡邉さん。

最後に自身にとって猫はどのような存在なのか聞いてみると、「その答えは日々変わっていくというのが正直なところです。時にどうしようもない私を救ってくれる存在だったり、時に私が最期まで目に焼き付けなければいけない存在だったり…。「自分や人間にとって猫とは何か」ずっと考えていかなければならない存在だと思っています。」と、猫と向き合い続ける真摯な思いを語ってくれました。

凛々しい表情のさくらねこも
凛々しい表情のさくらねこも

写真展の会期は2月29日まで。会場で販売されているポストカードや作品の売上げの一部は、保護猫たちの医療費や飼育管理費などに充てられます。

『飼い主のいない猫写真展 Photo by Canary Watanabe』
期間:2024年2月1日(木)~2月29日(木)
時間:10:30~19:00(初日13:00〜)
休み:2月7日(水)、2月26日(月)
会場:Space KURURU ウォールギャラリー
住所:東京都府中市宮町1-50 くるる4階

取材協力:Canary Watanabe(渡邉果菜里)さん

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