擬人化されたネコの面白さとは?歌川国芳作品の魅力に迫る「もしも猫展」が名古屋市博物館で開催
人間でないものを人間に見立てて表現する「擬人化」。
現代のエンターテインメントでは欠かせない表現方法ですが、日本では古くからさまざまな動物が擬人化の対象になっていて、私達の身近にいるネコもそのうちの一つ。
とりわけ江戸時代に活躍した浮世絵師・歌川国芳(うたがわ くによし)の作品は有名で、ネコが着物を着て踊ったり芸をしたり、人間のように生活する姿を描いたユーモラスな絵は当時の人々を魅了しました。
そんな江戸時代の擬人化表現の面白さに着目した特別展「もしも猫展」が7月2日(土)より名古屋市博物館で開催されます。
本展は猫を主役とした浮世絵作品を通じて、江戸時代における擬人化表現と、歌川国芳の魅力を探ってゆく展覧会。全5章にわたって約135件の作品が展示されます。
<展示構成>
序章:猫を描く人
第1章:くらべてみる
第2章:擬人化の効能
第3章:おこまものがたり
第4章:人、猫になる
第5章:国芳のまなざし
終章:もしも…。
キーマンとなる歌川国芳は、動物を擬人化したコミカルな作品などユニークな画風から「奇想の絵師」とも呼ばれた浮世絵師で、猫を抱えながら絵を描いていたと言われるほど無類の愛猫家。
猫の擬人化作品については1841年(天保12年)頃から集中的に描き始めていますが、会場では猫をテーマに据えた浮世絵をはじめ、江戸時代における擬人化の世界を紹介しながら、なぜ国芳の作品に人々が惹きつけられるのか、その魅力や後世への影響に迫っていきます。
浮世絵における擬人化表現の趣きは、人々に広く知られた既存のイメージから逸脱することで生まれる「可笑しみ」にある傾向が顕著。しかし、現代では江戸時代の人々が共有していたイメージを捉えることが容易ではありません。
そこで第1章の「くらべてみる」では、擬人化して描かれた作品と、その元となったイメージを具体的に見くらべてみることで、擬人化表現の魅力を再発見していきます。
一方、作品を描いた絵師の側は、擬人化して表現することで何を意図していたのか。
第2章「擬人化の効能」では、人間以外のものが主役となる異類物(いるいもの)や、その系譜をひく御伽草子や幕末の風刺画などを展示することで、江戸時代から明治にかけての擬人化作品を紹介。これらを眺めていくことで、擬人化によりどのような効能が引き出されるのかを見ていきます。
続く第3章の「おこまものがたり」では、江戸時代後期の戯作者・山東京山と、歌川国芳の共作によって刊行された雌猫”おこま”の長編小説『朧月猫の草紙(おぼろづきねこのそうし)』を紹介。異類の婚礼儀礼をつづった嫁入物の流れの中に同書を位置づけながら、「おこまものがたり」の継承と広がりを明らかにしていきます。
第4章の「人、猫になる」では、歌川国芳が制作した団扇絵(うちわえ)「猫の百面相」に着目。これは猫を人のように描くだけではなく、実在する人間の歌舞伎役者を猫に見立てて描くという、これまでにはなかった斬新な趣向で、役者戯画に与えた影響や、後世の浮世絵師たちへ受け継がれていった展開を見ていきます。
第5章の「国芳のまなざし」では、国芳の観察力や的確な表現力とともに、次から次へと溢れ出るユーモラスなアイデアが詰まった作品が展示されるほか、展覧会の最後にはもういちど、歌川国芳が擬人化の猫作品を集中的に描きはじめた頃の作例を展示。
浮世絵師・歌川国芳の溢れる才能と魅力をたっぷりと堪能することができます。
また、会場内には作品を見比べることで理解を深める「くらべるクイズ」や、「もしも国芳らが描いた猫たちが絵から飛び出してきたら?」などの想像を実現した「もしもAR」など、展覧会を楽しむための仕掛けも用意されていて、さまざまな切り口から作品を鑑賞することが可能。
浮世絵や猫が好きな人はもちろん、現代の擬人化表現に関心を持つ人も楽しめる展示内容で、人間のようにユーモラスで愛嬌のある猫の姿を楽しめる展覧会となっています。
名称:もしも猫展
期間:2022年7月2日(土)~8月21日(日)
時間:9:30~17:00
休館:7/4・11・19・25・26、8/1・8
会場:名古屋市博物館
住所:愛知県名古屋市瑞穂区瑞穂通1-27-1
<参考>
・ネコの妖怪「猫又」が可愛いアクセサリーになって登場!モデルは歌川国芳の浮世絵作品ニャ
・猫や犬だけじゃない!江戸時代に描かれた動物画160点を収録した書籍「浮世絵動物園 」
・お値段は1万5千円!ネコ好きな浮世絵師・歌川国芳の名作が「ベアブリック」で現代に蘇る
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