家出した猫はどこに行くのか?謎に包まれた空白の時間を描いた絵本「なぁなぁ、あそぼ!〜」
家の中を自由に出たり入ったりしながら飼っている猫は、ある日突然ふらっと姿を消して家に帰ってこないかと思えば、数日後にひょっこり戻ってくることがあります。
屋内にいる時の猫は食事をしたり、お気に入りの場所でごろごろしたり、飼い主さんに甘えてきたりと行動パターンが限られますが、ご飯やお水を用意してもらえず、見知らぬ人や猫と遭遇する屋外では、飼い猫が一体どのように過ごしているのか気になるところ。できればこっそりと覗いてみたいものです。
そんな家出ねこの空白の時間を描いたのが「なぁなぁ、あそぼ!〜」という絵本。
主人(猫)公は一匹の茶白猫で、関西弁の一人称語りで物語が展開。
子猫の時に人間の家族に引き取られ、同居する女の子に溺愛されながらずっと一緒に育ってきたものの、最近はあまり遊んでくれなくなってしまったことから、かまって欲しくてつい引っ掻いてしまう茶白猫。
いたたまれずに家出をして落ち込んでいると、一匹のねこが声をかけてきて、誘われるままに連れてこられた場所は……なんと猫の世界!
連れてきた猫いわく、人間はみんな初めのうちは可愛がってくれるけれど、しばらくすると見向きもしなくなってしまう。そうやって傷ついた猫たちがこの世界にやってくるのだそうで、「お前も人間のことなど忘れて、ここで元気を出せ」と促されます。
猫の世界にはいろんな猫が登場し、レストランや居酒屋で飲食をしたり、会話を楽しんだり、月光浴をしたり、砂温泉で疲れをとったり、病院に通ったりと、まるで人間世界のように猫たちが日常を過ごす様子が描かれています。
最初は仲間たちと楽しく遊んでいた茶白猫ですが、街の中には「ふしぎな鏡」という看板を掲げた一軒の建物があり、お店の前には「あなたの たいせつなひとが みつかる」と書かれたボードが。
そして「ふしぎな鏡」に写ったのは……。
著者は『あっちゃんあがつく(リーブル)』『子どもと楽しむ行事とあそびのえほん(のら書店)』などの作品で知られる絵本作家の「さいとうしのぶ」さん。
自身が猫と共に生活する中で抱いた「家出ねこたちは何処に行っているのか?」という素朴な疑問から生まれた作品で、猫を飼っている人には思い当たる節や共感できる要素も含んだストーリーが展開。
女の子との繋がりと、たくさんの猫たちが集う世界を、楽しく・可愛く・温かく描いた1冊となっています。
<参考>
・猫で算数を好きになる!物語を楽しみながら足し算・引き算をイメージできる絵本『たすひくねこ』
・またたびハンバーグが美味しそう!世にも不思議な猫世界のスピンオフ絵本「ねこのようしょくやさん」
・ねことプレゼント探しの旅に出かけよう!全編リトグラフで描いた絵本「ふしぎなニャーチカ」
(C) Iwasaki Shoten.