NHKの「ネコがみるみるテレビ」を見てみた&猫に見せてみた
NHKが放送予告していた、猫が見るための番組「ネコがみるみるテレビ」が昨夜放送されました。
この番組はNHK大阪放送局による制作のため、残念ながら関西地方の人しか見ることができない番組だったわけですが、Cat Press編集部では在阪の方から録画データを提供してもらい視聴することができましたので、番組を見ることができなかった猫好きの方に向けて、その内容と結果をご紹介したいと思いますよ。
どんな番組なの?
20分ほどの短い番組でしたが、ストーリーとしては、猫が見る(猫が夢中になる)ための番組を作るために、専門家などにアドバイスを求めながら何種類かの映像を制作していき、最後に猫寺として有名なお寺にいる猫たちの前で上映会を開いてその効果を検証する、という実験的な番組内容です。
番組を実際に見てみた
ことの始まりは、堀内一路さんという、テンション高めなNHKのカメラマンの方による発案がきっかけでした。
なんでも自身の愛猫、茶トラのチャト君が以前、ソチオリンピックの開会式の映像に釘付けになっていたことから、猫が見るための番組を制作するという企画を思いついたのだとか。
番組では3〜4人編成のチームで企画を出し合いながら、猫が夢中になるための映像を何種類か作り始めます。最初の方はご飯にかつおぶしをかけた猫まんまを人間が食べている映像や、猫の着包みを着たまま熱湯風呂に入って熱がっている映像をカメラマンの愛猫・チャト君に見せるなど、思わず目を覆いたくなるような光景が繰り広げられいきます。
番組を見ていた方の中にはこのあたりで、ヤバそうだな・・と思った方も多いのではないでしょうか。
しかし、意外にも熱湯風呂の映像にチャト君が興味を示します。当編集部の方では3匹の猫と一緒に番組を見ていたのですが、そのうちの1匹が同じく熱湯風呂の映像に興味を示しました。
もう少しでリモコンの停止ボタンを押すところでしたが、なんとか思いとどまり番組の視聴を続けます。
その後も、チャト君(♂)の気を引くためペルシャのような美しい猫(♂)を撮影して映像を流すなど、涙ぐましい努力を重ねるものの、なかなか猫の気を引く映像を作ることができません。
そこで方針転換をして、猫本の著作がある学習院大学と京都大学の教授の元をそれぞれ訪れて、映像制作のアドバイスをもらいにいきます。すると、1人の教授から、「猫は物理法則を理解していて、それに従って起こる事象を予測できる賢い動物なので、手品を見せたり動くものを見せると良いですよ」と、具体的なアドバイスをいただくことに成功。
それを参考に、ジャグリングなどパフォーマーが物を常に動かしている映像を収録していきます。
さらに映像だけでなく「音でどうやって猫の注意を引きつけるか」という点にも着目。母猫が子猫に発する音を模したという、アメリカの音楽家が猫のために作った曲を映像のバックミュージックとして採用することに。
こうしてようやく実験の準備が整いました。
上映会の開始
上映会の舞台となったのは、敷地内に約30匹もの猫が暮らしている、福井県の御誕生寺(ごたんじょうじ)というお寺。猫目当てに全国から人がやってくるほど人気の猫寺です。
お寺の敷地内(屋外)にテレビを設置し、猫の鑑賞席としてぬくぬくの電気毛布までセットして上映会場の準備を整えていきます。
「お家にいる猫様をテレビの前にお集めください」とナレーションが入ったところで、こちらも3匹の猫と一緒にスタンバイ。
この先、画面には猫用の映像が写るので、猫寺の会場で同じ映像を見ている猫たちの反応は分かりません。なので、以下に記す猫の反応は、当編集部の猫たちの反応になります。
映像は3匹全員がテレビの方を向いていない状態で始まりました。すると、猫用のバックミュージックが流れた途端、丸まっていた1匹の猫がクルッと顔をテレビの方に振り向けたではありませんか。人間にとっては眠くなりそうな曲なのですが、音楽だけで丸まっている猫を振り向かせるとは少し侮っていたようです。
続いてパフォーマーが物体を操る映像へと続いていきますが、反応した猫はそのままテレビを見続けています。むしろ物体の動きを真剣に目で追い始めています。しかし他の2匹は画面を見ることなく寝込んでしまいました。
その後は手品の映像などが交互に流れていくのですが、猫は立ち上がるほどではないにしろ、なんとくテレビを見続けます。その間、バックミュージックはずっと流れているので、人間的には眠気との戦いです。
とは言え、上映時間はそんなに長くないので、眠いのを少しこらえるだけでなんとか最後まで見ることができました。
猫の反応はどうだったのか?
上映が終わると、画面は猫寺の様子へと切り替わるのですが、なんと、映像を流し終えた後には猫が1匹も上映会場にいないではありませんか。手間ひまかけて作った映像は、猫寺の猫たちにとってはまるで興味がなかったという、散々たる結果になってしまいました。
そして間髪をいれず、お寺の副住職さんから「計画を立てることの重要性」を説かれながらエンディングを迎えるという・・なるほど、確かに実験的な番組でした。
さて、では編集部の方で一緒に視聴した3匹の猫はどうだったのか。
番組の映像を通しで流した時は、先ほど挙げた1匹しか反応しませんでした。しかし、猫がテレビの方を向いているタイミングを見計らって映像を再生してやると、まったく見向きもしなかった猫が2匹とも食い入るように映像を見ています。
いずれも、パフォーマーが物を操っている映像ですね。
映像の切り替わるタイミングや他の映像では見るのを止めてしまったので、ぜんぶの映像に興味がある訳ではなさそうです。京都大学の教授が指摘したとおり、何かが動いている映像に引きつけられるようですが、例えばミラーボールの光が動いている映像などには興味を示しませんでした。
編集部で検証した猫の場合は、「物体が動き続けている映像をある程度見続ける」という傾向が見られたような気がします。もちろん、猫の視線がテレビ画面に向いている状態であることが前提です。
一方、番組では実験の仕方に問題があったような印象を受けました。せっかくですので、問題提起をしておきたいと思いますよ。
■普段猫が寛いでる場所で視聴させるべき
番組では毛布などを敷いて即席の上映会場を作っていましたが、それは猫にとって普段くつろいでる場所ではなく、自分のニオイが付いているものでもないので、じっと上映会場にいてくれる可能性は低いでしょう。
■室内の静かな環境で視聴させるべき
屋外は風や物音など猫の気が散りやすい要因が多いので、テレビの映像や音に集中できない可能性が高いでしょう。猫は一度画面から視線を外してしまうと、次の瞬間、興味は別のところに移ってしまいます。
■音楽ではなく音で注意を引きつけるべき
いくら映像を作り込んでも、猫がテレビ画面を見てくれなければ話しになりません。猫用の音楽は1匹だけ興味を示しましたが好みが分かれるようなので、1つの音楽を流し続けるのは効果的ではないでしょう。虫や鳥が羽ばたいたりする音や動物の鳴き声など、猫の本能を刺激するような音をローテーションして流したほうが、より多くの猫の視線をテレビ画面に向けられる気がします。
特に分かりやすいのは2点目。
今回、この番組を猫と一緒に見た方は、おそらく室内で見ている方が多いと思いますので、ソーシャルメディアで番組について言及している発言の中から、映像について猫が反応したと述べている数を集計してみました。
TwitterおよびFacebookの公開タイムラインを対象に、番組名を4種類のキーワードで検索した結果が下記の表です。
出典:Yahoo!リアルタイム検索
番組名に言及した発言数は234件で、そのうち175件は猫の反応に関する言及が見られず、猫を飼っていない人の発言も含まれるため映像の評価対象からは除外します。結果、映像に猫が反応したと述べている人の方が多いことが分かりますね。
また、集計内容を個別に眺めていると、画面すら見なかったという発言もちらほら見かけましたので、テレビ画面に視点が合っていればさらに反応していた猫の数は多かったものと思われます。
できればNHKさんには関西以外の地域でも放送してもらい、全国の猫飼いさんたちの反応を広く聞いてみると、猫寺で行った上映会とは違った実験結果が出るのではないでしょうか。
一方、ソーシャルメディア上の感想では今回の番組について、企画自体は「画期的」「面白い」といった評価をされている方も少なくありませんでした。
猫を飼っている身としては、愛猫がテレビに夢中になっている姿を後ろから眺めていると、嬉しい気持ちになるものです。他局でこのような実験番組はなかなか見ることができませんので、NHKさんには他の地域での放送や、第二弾の放送などを期待したいですね。
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