「眠いから先に寝るねー」パジャマ姿でおやすみの挨拶をする猫の木彫作品、その造形に込められた作家の切ない思いとは?

猫は人間よりも短命で、いつか必ず別れの時がやってきてしまうもの。いつも一緒にいた愛猫を失うのは非常に辛い出来事ですが、創作活動を行っている人の中には、愛猫との別れによって抱いた思いや感情が作品に現れることもあります。

猫の木彫り作品を制作しているしろもふさん(@shiro_mofusan)が、先日SNSに公開したのは、春ごろから合間合間に彫っていたという大きな木彫り猫。その外見はとってもユニークで、人間のように二本足で立ったまま、パジャマ姿で手を振っている猫のたたずまいが表現されています。

愛猫との別れを「眠いから先に寝る姿」で表現した猫の木彫り作品 by 白もふさん
眠いから先に寝るニャ

パジャマを着ているだけではなく、足元にはスリッパを履いたラフな部屋着スタイルで、左手には枕を抱えていて、今まさにこれから寝ようとしている瞬間を切り取ったワンシーン。

軽く右手を振るようなポーズからは「先に寝るね」と挨拶をしているようにも見えるほか、曲がった背中や深みのある表情からは歳を重ねた猫ちゃんであることがうかがえます。

実はこの猫ちゃん、2月に旅立ってしまった愛猫を思って制作されたもので、愛猫に旅立たれたのはとても悲しいけれど、「眠いから先に寝ただけ」と思うと心が軽くなる気がしたことから、自分にそう言い聞かせるように眠りにつこうとしている様子をイメージして彫った作品。愛猫の本当の外見は白くてモフモフした毛並みであったものの、そっくりに作るのがとても辛かったため、キジトラの柄で表現しているのだとか。

愛猫との別れは重くなりがちなテーマであることから、「時が経つというのはこういう事なんだ」と思い、少し明るく表現されているのも本作のこだわりポイント。また、目の部分は少し潤んだ感じを出すために着色にこだわっていると言います。

しろもふさんが木彫りした猫の作品は自身のSNSでたくさん公開していて、メロンパンを手にした猫のパン屋さんや、本を読みながら寝落ちしちゃった猫、水着を着て浮き輪を装着した猫など、絵本の中に登場しそうなメルヘンチックな雰囲気をまとっているのが特徴的。

木彫りで制作した「猫のメロンパン屋さん」 by 白もふさん
猫のパン屋さん

木彫りで制作した「本を読みながら寝落ちしちゃった猫」 by 白もふさん
寝落ちしちゃった猫さん

何か意識しているテーマがあるのか聞いてみると「一貫したテーマはあまり考えていません。その時に彫りたいと思った猫を彫っています。でも過去作を思い返すと、猫の街に住むそれぞれの猫の生活を制作してる気がします。」と回答。また、猫の木彫り作品を作る時のこだわりについては「あまりないのですが、一つ一つ楽しんで作る事です。」とのことで、どんな性格の子になるかは、制作が進んでくると木彫り猫が教えてくれると言います。

そんなしろもふさん、以前は他の動物をモチーフにした木彫り作品も制作していましたが、SNSで投稿した猫作品が企画展の目に止まり、出品するようになってからは猫の作品に注力。今後は自身の勉強のための彫刻にも力を入れていきたいそうですが、作品作りのモチベーションは「とにかく楽しい」というのが続けている理由で、出来上がった子を見てはニヤニヤしてしまうのだとか。

木彫りで制作した「水着をして海水浴する前の猫」 by 白もふさん
海水浴が待ちきれニャい

猫のことがとっても好きな気持ちが伝わってくるエピソードですが、猫のどんなところに魅力を感じているのでしょうか。

それについては「マイペースで媚びないところですね。空気を読まないけど、嘘もつかない。潔いですよね。こんな風に生きられたらいいなと憧れます。」と述べる一方で、自身にとって愛猫の存在は「憧れと癒し」であったと述懐。「おじいちゃん猫が空に帰ってから大きな支えになってくれていた事を実感しています。守っているつもりで守られていた気がします。」と、別れによって気づいた愛猫の存在感についても語ってくれました。

取材協力:しろもふさん(@shiro_mofusan)

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