イギリスに住む自閉症の男性、介助猫クロエとの入店を拒否した大手スーパーマーケットを提訴

イギリスに住む自閉症の男性が、介助猫の入店を拒否した大手スーパーマーケットを訴えて話題になっています。

海外スーパーマーケットのイメージ写真

ロンドンで暮らすプロダクトデザイナーのイアン・フェンさんは、最近重度の自閉症と診断。騒々しい環境の中にいると感覚が過敏になって不安を感じてしまい、心を閉ざしてしまうことに長年苦しんでいるといいます。

そんなイアンさんにとって癒やしの存在が、飼い猫のクロエ。

イギリスの介助猫「Chloe the Black Cat」クロエの写真
黒猫の「Chloe(クロエ)」

もともとレスキューセンターにいたところを、イアンさんが引き取って一緒に暮らし始めたのだそうで、最初は家の中でゴロゴロしているのが好きな猫であったものの、肥満気味であったことから食事のコントロールと並行して、ハーネスとリードをつけたまま裏庭を歩くトレーニングを開始します。

ところが、動物病院に連れて行こうとキャリーケースに入れようとしたところ、激しく抵抗するクロエ。無理に入れたまま連れて行けば心を傷つけてしまうのではないかとの思いから、ハーネスを装着してバスに乗車することを選択したイアンさん。その後は鉄道会社(LNER)にも許可を得て、クロエは電車でもキャリーを使用せず移動するようになります。

そんな中、ストレスを感じていたはずの環境下において、クロエと一緒にいることで症状が緩和することに気づいたイアンさんは、日常生活の中で一緒に行動できるようトレーニングを実施。今では30軒以上のレストランやパブをはじめ、ホテルに宿泊したり、水族館に行ったり、ショッピングをしたり、仕事の会議に出席したりと、ハーネスを付けたまま一緒に行動を共にするようになったといいます。

公共の場におけるクロエは、イアンさんの横に小さな専用マットを敷いてやると座り込み、そこから離れることなく周囲を眺めたりして過ごしているのだとか。体には「SERVICE CAT(サービスキャット)」と書かれた黄色のジャケットを装着しており、介護猫であることを周囲に示す配慮も。

「SERVICE CAT(サービスキャット)」と書かれた黄色のジャケットを着るイギリスの介助猫クロエ
トレードマークのジャケットにゃ

しかし、そのような行動が万人に受け入れられるわけではないことから、初めて訪れたり利用する施設には、事前にコンタクトを取って確認することが欠かせません。

イギリスの4大スーパーマーケットのひとつ、セインズベリーズ(Sainsbury’s)でも、事前確認で許可を得られたものと思って店舗を訪れたところ、店員や警備員から猫を店の外に置いてくるように言われてしまい、ひどく動揺してしまうイアンさん。同店によると、猫は行動や訓練を評価する方法がなく、入店可能な動物は補助犬のみ。クロエを入店させれば他の訓練されていない猫の入店も認めることになり、混乱を引き起こす危険性があることが理由であると説明されてしまいます。

イアンさんにとって大手スーパーマーケットで入店を断られたのは初めての経験で、自信を喪失してしまい、2週間ほど家に引きこもってしまう事態に。日常生活を助けてくれるクロエの入店を禁止することは、自らの自立を制限していると感じたイアンさんはお店側を提訴しています。

訴えられたセインズベリーズ社によると、最優先事項は「安全」であり、高い食品衛生基準を維持すること。一方で店内においてサポートを必要とする顧客がいることは理解しており、安全を損なうことなくイアンさんの来店を支援する方法がないか、環境衛生チームと協力して確認を進めているとの声明を発表しています。

<参考>
Chloe the Black Cat(@chloe_blackcat)
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(C) Ian and Chloe.

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