猫はウンチのニオイを嗅いで性別や個体を識別していた〜岩手大学が発表
岩手大学農学部の宮崎雅雄(みやざき まさお)准教授らによるグループは先月、猫のフンが悪臭を放つ原因を特定したと同時に、その原因が猫の性別を識別するフェロモンとして機能していることが明らかになったと発表しました。
同研究グループでは昨年の8月に、ネコの尿から抽出した物質を利用することで猫の糞尿被害を防止する新技術の開発に成功したとの発表がありましたが、今回は糞(フン)のニオイに着目した研究結果。
キーとなるのは、猫のフンの悪臭の原因が「3-メルカプト-3-メチル-1-ブタノール(以下、MMB)」という硫黄含有化合物であることを突き止めたこと。
研究では猫に「MMB」を含むフンのニオイと含まないフンのニオイを嗅がせて検証したところ、嗅ぎ時間の変化からその2つを嗅覚で識別できることが判明。ニオイを嗅ぐことで猫のフンなのか、他の動物のフンなのかを識別していると考えられます。
また、この「MMB」はメス猫よりもオス猫の方が放出量が多い(=オス猫のフンのニオイの方が強烈である)ことから、「MMB」のニオイの強さでオス猫かメス猫かを識別していると考えられ、「MMB」が猫の性識別フェロモンの一種として機能していると結論付けています。
さらに猫のフンの悪臭の主成分は個体よって組成比が異なる特徴があり、猫はその違いを嗅ぎ分けて個体を識別していると考えられるのだとか。
確かに猫が複数いる環境下では、他の猫がしたフンのニオイを注意深く嗅いでいる姿を見かけることがありますが、猫にはそれがどの猫のフンなのか、ニオイを嗅いだだけで分かっているということになりますね。
猫の排泄行動を見ていると、フンに砂をかける時とかけない時があります。
通常、猫がフンをする時は自分のニオイを隠すために土や砂をかけてフンを埋める習性がありますが、フンを埋めずに立ち去る場合はそこが自分の縄張りであることを主張する意味がある一方で、フンのニオイを嗅ぎ付けた別の猫にとっては、相手が猫なのかどうか、さらには性別や個体情報などを識別して、争いを避けるために生活環境を棲み分けたり、異性の発見に役立てていると考えられてきました。
今回の研究結果では、猫がフンのニオイから種や性別や個体を識別できると考えられることから、猫がフンに砂をかけない行動には意味があり、また、フンのニオイを介して様々なコミュニケーションを行っているという説が科学的な検証によって補足されたと言えそうです。
宮崎准教授らのグループによると、猫のフンの悪臭の原因が判明したことにより、今後は悪臭を低減する技術の開発が期待されるとしています。
岩手大学、ネコの糞尿被害を防止する新技術の開発に成功したと発表