岩手大学、ネコの糞尿被害を防止する新技術の開発に成功したと発表
岩手大学は8月17日、農学部の宮崎雅雄氏・山下哲郎氏らの研究グループが、ネコの糞尿被害を防止する新技術の開発に成功したと発表しました。
ネコの糞尿被害は、人間にとってもネコにとっても不幸な結果を招いてしまうので、それを防止する技術が誕生したとなれば、猫好きな人の中には関心がある方も多いのではないかと思いますが、一体どのような技術なのでしょうか。
同大学の発表によると、ネコの尿には「ネコのニオイ嗅ぎ」を誘引する物質が含まれており、その物質を抽出して撒いておくと、近くを通ったネコを引き寄せる効果を発揮。さらに、そのニオイを嗅いだネコは糞尿をすることなく立ち去ってくれることが判明したのだとか。
つまり、尿から抽出した物質を使うことで、ネコの糞尿被害を減らすことに繋がる効果が期待できるという訳ですね。
イメージ的には他のネコの尿を撒いておくと、そこを通りかかったネコは近くにオシッコの主がいると判断して立ち去ってくれる、というネコの縄張り行動を利用した防止策なのですが、ネコの尿はとてもキツイ臭いがしますので、そのまま住宅街に撒いたのではそれこそ糞尿被害になってしまいますよね。
そこで同大学の研究グループは、尿からニオイの元となる要素を除去した物質に、尿と同等のニオイ嗅ぎを誘引する効果があるのか調査を実施。野良猫の糞尿被害に困っている民家の庭先などに抽出物を撒いて糞尿被害の低減効果を調べたところ、夜間に現れた野良猫は抽出物のニオイを嗅いだ後に糞尿をすることなくその場を立ち去ったのだとか。
このことから、人間の鼻には臭わないけれど、ネコにとってはニオイを嗅ぎたくなる物質を撒くことで、近くにいる野良猫を引き寄せて糞尿せずに立ち去らせる(=糞尿被害を減らせる)効果を期待できると考えられるのだそうです。
一般的にネコの糞尿被害に対しては、ニオイを使った忌避剤や聴覚に訴えかける超音波機器など、ネコが嫌がることをして追い出そうとする対策が多いですが、今回の研究結果を活用することで、ネコの縄張り行動によって立ち退いてもらうことが期待できる、という点が画期的ですね。
ネコの糞尿被害を受けた場所は排泄物による悪臭問題だけではなく、それが原因で近隣住民同士のトラブルに発展するケースもありますし、人畜共通伝染病の観点からも大きな問題となります。特に、幼稚園の園庭や児童公園の砂場など、小さな子供が利用する場所での被害は心配ですよね。
日本では行政による猫の殺処分が大きな問題となっていますが、野良猫の糞尿被害が減れば、保健所などに通報される回数を減らす効果も期待できそうです。
今回の研究結果を活用してネコの糞尿被害が減り、少しでも猫と人間が共生しやすい環境に改善されると良いですね。
参考:http://www.iwate-u.ac.jp/oshirase/file/3374_0.pdf