アメショやマンチカンなど5つの猫種にも心臓病のリスクが判明、日本の共同研究グループが遺伝子検査の結果を発表
ネコは人間にとってかけがえのないパートナーですが、人間同様にさまざまな病気があり、心臓病によって亡くなってしまう子も少なくありません。
ネコの心臓病の中で最も多く見られるのが「肥大型心筋症(HCM)」という病気。
肥大型心筋症とは、心臓の壁が分厚くなることで血液を溜めておく部屋が狭くなり、全身に送り出せる血液の量が減ってしまい、心不全や血栓症、突然死などを引き起こす重篤な病気のこと。
特にメインクーンやラグドール、スフィンクスにおいては、遺伝的な要因が関係して発症すると考えられており、肥大型心筋症にかかりやすい品種として知られていました。
しかし、ペット保険事業を手がけるアニコム損害保険によると、これまで肥大型心筋症の罹患に関する研究で用いられてきたネコは、欧米の個体が中心で調査対象に偏りがあったと指摘。
一方、日米におけるネコの遺伝子を比較した研究では、同一品種のネコ同士でも両国間で遺伝子の由来が異なることや、メインクーンやラグドールが他の品種と過去に交配していた痕跡が見つかっていることから、他のネコ種でも肥大型心筋症のリスクを持っている可能性があったといいます。
そこで同社では、日本獣医生命科学大学・麻布大学と共同で、肥大型心筋症に関連する遺伝子変異の有無を、13品種と雑種のネコを対象に実施。
まず76頭のネコに遺伝子検査を実施したところ、メインクーンのみが持つと考えられていた罹患リスクを高める変異の一つ(MYBPC3 p.A31P)を、日本で多く飼育されているスコティッシュフォールドとマンチカンの2品種も持っていることが判明。
続いてスコティッシュフォールドとマンチカン、それぞれ約100頭を対象にした遺伝子検査を実施したところ、同変異はどちらの品種でも50頭に1頭以上の頻度で存在することが明らかになりました。
また、スフィンクスのみが持つと考えられてきた肥大型心筋症と関連のある遺伝子変異(ALMS1 p.G3376R)は、前述の検査結果を通じてスコティッシュフォールド、マンチカン、アメリカンショートヘア、エキゾチックショートヘア、ミヌエットからも発見されたため、同変異はスフィンクス特有のものではないことが示されています。
ネコの肥大型心筋症は、主に心エコー図検査などを用いて診断され、専門医でも診断が難しいケースがあるうえに、根本的な治療方法は確立されていないのが実情。その一方で、純血種のネコは人間が繁殖を管理していることから、肥大型心筋症に罹患するネコを減らすためには、遺伝子検査の結果を踏まえたリスクが高い個体を繁殖しないようにすることが重要であると言えそうです。
アニコム社によると、今回の研究成果はペットの遺伝病を予防するのに役立てることができるほか、特定の遺伝子変異の有無を広範囲の地域と品種を用いて調べる重要性を示しており、今後も様々な遺伝子変異の解析が行われることによって、国や品種を越えてネコの遺伝病罹患リスクを下げられる可能性があるとしています。
<参考>
・世界初!アメリカンショートヘアの遺伝情報をすべて解読することに成功、アニコムが研究結果を発表
・犬猫の健康寿命を伸ばせるか?鳥取大学とノルデステ社が抗老化成分「NMN」の共同研究を開始
・ペットの尿から簡単にがん検査ができる時代に?国内の研究機関が線虫を使ったイヌネコの研究成果を発表
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