ペットの尿から簡単にがん検査ができる時代に?国内の研究機関が線虫を使ったイヌネコの研究成果を発表

国内企業を中心とした研究機関が、線虫(せんちゅう)という生物を使ったイヌネコ向け「がん検査」の研究成果を発表。ペットに負担の少ない検査として実用化が期待されています。

犬と子猫が一緒に寝ている写真
既存のがん検査は負担が大きいのニャ

近年、人間の家族の一員として生活するようになった犬猫は、飼育環境の向上や獣医療の発展などの影響によって平均寿命が伸びており、今では死亡原因の1位を人と同様に「がん」が占めるようになってきました。

しかしながら、ペットのがん検査は動物への身体的負担が大きいため、定期的に受けるにはハードルが高く、病状が進行してから発覚するケースが少なくないのが実情。また、病気は症状が重くなるほど医療費が膨らむことが予想されるものの、ペットには公的医療保険がないため、飼い主は心理面だけでなく経済的な不安を抱えやすい状況に置かれています。

そんな中、猫や犬のためのがん検査について研究・開発を行っているのが、東京都千代田区に拠点を構えるHIROTSUバイオサイエンス社。

同社は線虫という小さな生物の嗅覚をセンサーに用いて、世界で初めて人間のがんの早期発見サービス「N-NOSE(エヌノーズ)」を開発した企業。

嗅覚に優れた線虫が、人の尿中に含まれるがん特有の匂いを検知する性質を利用した検査(精度は86.3%)で、健康診断と同じくわずかな尿で検査できるため痛みなどの苦痛を伴わなず、一度の検査で全身のがんリスク(15種類)を調べることができるほか、線虫の飼育コストが安いため検査料金を安価に提供できるといった特長を持ち合わせています。

線虫の嗅覚で「早期すい臓がん」の特定検査を開発、N-NOSE 次世代がん種特定検査の開発成功に関する記者会見
昨年には「早期すい臓がん」の特定検査を開発

今回、この人間用に開発された「N-NOSE」という検査が、猫や犬にも応用できる技術であることを示す実験結果をまとめた臨床研究論文が、国際科学雑誌の「Biochemistry and Biophysics Reports」に掲載。

ペット保険会社や11の動物病院と共同で行われた同研究は、ネコ23頭(健常個体10頭、腫瘍個体13頭)、イヌ37頭(健常個体19頭、腫瘍個体18頭)を対象に臨床試験を行ったところ、尿サンプルにおいて、健常個体と腫瘍個体の間で特定の線虫の反応に有意な差があることが判明。

特定の環境下において健康なグループと腫瘍グループとを区別し得ることが示されています。

HIROTSUバイオサイエンス社によると、この研究結果は線虫を使った検査が、簡易・正確・低コストながんスクリーニング法として、イヌネコに有用であることが示されたと考えられると指摘。

ペットのがんは人と同様に早期発見・早期治療できれば根治が望め、余分な支出を抑えることに繋がることから、今後も引き続きペット用「N-NOSE」の研究・開発を進めていき、一日も早い実用化を目指すとしています。

<参考>
ネコの寿命を伸ばす治療法を開発!その道のりを研究者がつづった書籍「猫が30歳まで生きる日」
猫のジャンプ回数が病気の早期発見に繋がる可能性も…!国内企業の研究結果が米科学雑誌に掲載
世界初!アメリカンショートヘアの遺伝情報をすべて解読することに成功、アニコムが研究結果を発表

(C) Hirotsu Bioscience Inc.

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