猫を愛した作家の企画展「大佛次郎と501匹の猫」11/26まで開催中

猫を愛した作家・大佛次郎(おさらぎ じろう)の生誕120年を記念した企画展、「大佛次郎と501匹の猫」が栃木県にある那珂川町馬頭広重美術館にて開催されています。

那珂川町馬頭広重美術館で開催中の「大佛次郎と501匹の猫」展示風景

1897年(明治30年)に誕生した大佛次郎は、鞍馬天狗シリーズや赤穂浪士、パリ燃ゆ、天皇の世紀などの作品を執筆した国民的作家であると同時に、「猫は一生の伴侶」と語るほどの愛猫家。家の中では常に10匹以上の猫に囲まれて生活しており、一緒に住んだ猫の数は500匹を超えると言われるほど猫との関わりが深く、猫の置き物や玩具などを収集していたほか、猫にまつわる読み物も数多く残しています。

大佛次郎の写真(1925年、28歳時)大佛次郎(1925年 / 28歳)

本展では、今年生誕から120年を迎える大佛次郎の業績を振り返るとともに、大佛次郎記念館の所蔵する人形や浮世絵、書籍など、大佛次郎が収集した多彩な猫コレクションを展示。多忙な執筆生活を和ませた「猫」への優しく暖かい想いが感じられる、さまざまな作品を鑑賞することができます。

那珂川町馬頭広重美術館で開催中の「大佛次郎と501匹の猫」展示作品

会場の展示内容は大きく9つの項目に分かれていますが、本記事ではその中でも特に猫に関する見どころをご紹介します。


猫のいる日々

-エッセイの中の猫たち-
猫を愛した大佛次郎は、猫についての読み物も数多く執筆し、「やがて私が80歳90歳になったらこの一生の伴侶のためにすばらしく厚く大きな本を出すつもりである」と述べていましたが、残念ながら75歳で亡くなるまでに、その「すばらしく厚く大きな本」は出版されませんでした。

しかし、その思いは関係者に引き継がれ、没後5年目に「猫のいる日々」が出版。同書は、童話や小説とともに、猫への愛情が詰まった約60編にのぼるエッセイを収録しています。

猫との暮らし

大佛次郎が初めて猫を飼ったのは小学校1年生の時で、「たま」という名前でした。その後、大正10年に結婚すると、酉子夫人と再び猫を飼い始めますが、戦時中も猫のために疎開せず、鎌倉の大佛家から猫の姿が絶えることはありませんでした。生涯に飼った猫の数は500匹を超えていたといいます。

大佛次郎と一列に並んでご飯を食べる猫 (1954年撮影:石井彰氏)1954年 大佛次郎と猫 (撮影:石井彰氏)

また、大佛次郎にとっては「玩具の猫も心を柔らげてくれる」存在でした。大佛次郎が収集した猫の人形や絵画は300点にものぼります。

スイッチョねこ

大佛次郎の童話「スイッチョ猫」は、やんちゃな子ねこ「白きち」のお話しです。

大佛次郎の童話「スイッチョ猫」「スイッチョねこ」大佛次郎作・安泰画

戦後の昭和21年(1946)、雑誌「こども朝日」に掲載されたもので、大佛次郎は「私の一代の傑作」と自賛し、「書いたものでなく生まれたものだった」と語っています。本作は今なお多くの人々に愛されているロングセラーで、現在は画家の安泰が描いた絵本が書店に並んでいますが、過去には、猪熊弦一郎、田中満、朝倉摂なども、この童話の絵を描いています。

猫の浮世絵

大佛次郎の猫コレクションには、多くの浮世絵が含まれていますが、これは画家の木村荘八(きむらしょうはち)(1893-1958)の形見として大佛次郎に贈られたものです。

「其のまゝ地口 猫飼好五十三疋」1 歌川国芳作
「其のまゝ地口 猫飼好五十三疋」2 歌川国芳
「其のまゝ地口 猫飼好五十三疋」3 歌川国芳「其のまゝ地口 猫飼好五十三疋」歌川国芳画

木村荘八は、「霧笛」や「幻燈」など、大佛次郎の小説に情緒あふれる挿絵を描きました。木村荘八も大の猫好きで、二人は顔を合わせるとお互いに飼っている猫の数を報告し合っていたといいます。その浮世絵コレクションには、子供に人気のあった「おもちゃ絵」や、猫好きの絵師、歌川国芳の作品が含まれています。

その他にも本展の期間中は、ミュージアムトークやおはなし会などのイベントが予定されています。

ミュージアムトーク
同館学芸員の方が展示作品の解説をしてくれるトークイベントが開催。
前期:2017年9月16日(土)13:30〜
後期:2017年10月28日(土)13:30〜

「たまご」のおはなし会
図書館ボランティア「たまご」のおはなし会が開催。朗読のほか、手遊び、紙芝居などが予定されており、子供から大人まで無料で参加することが可能。
日時:2017年9月24日(日)13:30~
:2017年11月11日(土)13:30~
会場:那珂川町馬頭広重美術館 視聴覚研修室
申込:電話(0287-92-1199)にて予約
費用:無料

講演会「作家・大佛次郎とねこ」
講師:大佛次郎記念館研究室員 金城瑠以氏
日時:2017年10月15日(日)13:30~
費用:無料

会場となる「那珂川町馬頭広重美術館」は、江戸時代末期の浮世絵師・歌川広重の貴重な肉筆画を中心とした美術館で、本企画展以外の作品を鑑賞することもできます。

また、同館は建築家・隈研吾氏の代表作の一つで、世界中から見学者が訪れる美術館としても有名。平屋建ての建物全体を地元産の格子で覆い、自然豊かな那珂川町の景観に溶け込むような設計になっているので、館内や敷地内を散策してみるのも楽しそうですね。

大佛次郎生誕120年記念 秋季特別展 大佛次郎と501匹のねこ

期間:2017年09月15日(金)〜11月26日(日)
前期:2017年09月15日(金)〜10月22日(日)
後期:2017年10月27日(金)〜11月26日(日)
時間:9:30〜17:00
※入館は閉館の30分前まで
休館:月曜日(祝日は開館)、祝日の翌日
料金:700円、高大生400円、中学生以下無料

会場:那珂川町馬頭広重美術館

栃木県那須郡那珂川町馬頭116-9

画像提供:Nakagawa-machi Bato Hiroshige Museum of Art.

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