猫のキャラクターと、葛飾北斎の浮世絵が融合したイラスト作品を展示する「ますむらひろし展」岩手県立美術館で開催

漫画家のますむらひろし氏が描く漫画作品シリーズ「アタゴオル」のキャラクターと、葛飾北斎の浮世絵が融合したイラスト作品などを展示する「ますむらひろし展 -アタゴオルと北斎と賢治と-」が1月3日から岩手県立美術館で開催されています。

企画展「ますむらひろし展 -アタゴオルと北斎と賢治と-」のポスター

宮沢賢治の童話作品の漫画化やアニメーション「銀河鉄道の夜」(杉井ギ サブロー監督)の漫画原作者として知られている同氏の代表的なシリーズ作品が、猫と人間が同じ言葉を話し共存する理想郷を描いた「アタゴオル(ATAGOAL)」。

ますむらひろし氏による猫の絵「あむちゃん」1986年発表「あむちゃん」 1986年発表 (c)ますむら・ひろし

宮沢賢治の心象世界である「イーハトーブ」に呼応させながら作り上げたこの空想世界では、立って歩くユーモラスな猫「ヒデヨシ」と個性豊かな住人達を中心に物語が進んでいき、ヒデヨシが起こす数々の騒動をきっかけに新しい発見が「アタゴオル」の世界にもたらされる展開が特徴的。

これまでに4つのシリーズ作品(アタゴオル物語、アタゴオル玉手箱、アタゴオル、アタゴオルは猫の森)が発表されています。



作品に登場するキャラクターは多くの読者から支持され、これまでにシチューのCMをはじめ大手メーカーの広告に起用されお茶の間で人気を呼びました。

また、近年は葛飾北斎の描く日本の美しい景勝地の浮世絵に「アタゴオル」の住人たちが違和感なく溶け込んだカラーイラスト「アタゴオル×北斎」を発表。

例えば下記は大樽の中で板を削る職人の姿を描いた北斎の絵が元になっている作品で、上が北斎の元絵、下がますむら氏が描いたイラストです。

葛飾北斎「富嶽三十六景」尾州不二見原葛飾北斎「富嶽三十六景」尾州不二見原

尾州不二見原(富嶽三十六景) by ますむらひろし尾州不二見原(富嶽三十六景) 2010年発表 (c)ますむら・ひろし

一見すると人物が猫のキャラクターに置き換わっだけのようにも見えますが、よく見ると樽の板がところどころ猫の形になっていたり、樽を固定している台に絵が描かれていたりと、基本は元の絵を忠実に再現しつつも「アタゴオル」の世界観が違和感なく表現されています。

これはますむら氏が葛飾北斎の浮世絵を模写し、その作品を自分なりに解釈したうえで「アタゴオル」の要素をどのように描いていくのかを考え表現した作品で、付帯する同氏の解説文には浮世絵を模写して「アタゴオル」の要素を加える際の考えやそのプロセス、北斎の画業についての見解などが、北斎への尊敬と畏敬の念を持って語られています。

ますむらひろし《米沢市立興譲小学校創立130周年記念ポスター》2010年発表「米沢市立興譲小学校創立130周年記念ポスター」 2010年発表 (c)ますむら・ひろし


本展ではこの「アタゴオル×北斎」シリーズを中心に、登場人物を猫の姿に置き換えつつも原作の文章を忠実に表現した宮沢賢治童話のシリーズなど、ますむら氏の繊細で色鮮やかなカラーイラスト作品が集結。

作品以外にも漫画原稿や創作ノートをはじめ、作中の小道具の参考資料として使われた作家自身が所蔵する鉱物や古道具など、約200点が展示されています。

ますむらひろし《酔いどれ鉄の肖像》1976年発表「酔いどれ鉄の肖像」 1976年発表 (c)ますむら・ひろし

ますむらひろし《銀河鉄道の夜》1983年発表「銀河鉄道の夜」 1983年発表 (c)ますむら・ひろし

ますむらひろし《森に聴かせてる》1993年発表「森に聴かせてる」 1993年発表 (c)ますむら・ひろし


関連イベント

企画展の期間中は、ますむらひろし氏や展示作品に関連するさまざまなイベントも開催が予定されています。

■アーティストトーク
内容:作家による出品作品や制作についてのトーク会
講師:ますむらひろし氏 [漫画家]
日時:2019年1月12日(土) 10:00〜11:00
会場:企画展示室
備考:参加には本展観覧券が必要

■アーティスト対談
題名:賢治と盛岡ーイーハートーブの夢を紡いだ街
内容:作家が親交のある宮沢賢治研究家と対談を実施
講師:ますむらひろし氏 × 牧野立雄氏 [宮沢賢治研究家]
日時:2019年1月12日(土) 13:00〜14:30
会場:ホール

■サイン会
日時:2019年1月12日(土)15:00〜16:00
会場:ホール
※当日9:30よりグランド・ギャラリーの特設受付で配布される整理券を受け取った後、特設売店にて「ますむらひろし 北斎画集」またはますむら氏著書を購入のうえ開始10分前までにホールに集合

■ヒデヨシと握手しよう!
内容:ヒデヨシと握手して記念撮影ができるイベント
日時:2019年1月26日(土) 11:00〜/14:00〜(各回約30分)
会場:グランド・ギャラリー

■学芸員によるギャラリートーク
日時:2019年1月4日、1月18日、2月1日、2月15日
14:00〜(30分程度)
会場:企画展示室
備考:参加には本展観覧券が必要

■アート・シネマ上映会
内容:作家の原案や監修によるアニメーション作品鑑賞
題名:①銀河鉄道の夜(1985年/107分)
日時:2019年1月20日(日) 14:00〜15:47
題名:②イーハトーブ幻想~KENjIの春(1996年/58分)
日時:2019年2月10日(日) 11:00〜11:58/14:00〜14:58

イベント概要

名称:ますむらひろし展 -アタゴオルと北斎と賢治と-
期間:2019年1月3日(木)〜2月17日(日)
時間:9:30〜18:00(入館は17:30まで)
休館:月曜日、1月15日、2月12日
※1月14日、2月11日は開館

<料金>
前売:一般800円、高校生500円、小中生300円
当日:一般1,000円、高校生600円、小中生400円

会場:岩手県立美術館 企画展示室

岩手県盛岡市本宮字松幅12-3

画像提供:岩手県立美術館

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