ツシマヤマネコの人工繁殖が評価、ズーラシアが希少種繁殖を称える国内最高賞「古賀賞」を受賞
神奈川県横浜市にある動物園「ズーラシア」が希少動物の繁殖における国内最高賞「古賀賞」を受賞したと発表しました。
古賀賞とは、希少動物の保護増殖に大きく寄与した日本動物園水族館協会元会長で、上野動物園初代園長・古賀忠道博士の業績を記念して昭和61年に制定された賞のこと。繁殖が難しく世界的にも重要な種の繁殖に成功した動物園や水族館の業績を称えることにより、展示動物の増殖と種の保存に資することを目的として同博士からの寄付金を基金に運営されています。
よこはま動物園および横浜市繁殖センターでは、ツシマヤマネコ保護増殖事業に基づき環境省と日本動物園水族館協会との協働で、長崎県の対馬だけに生息する希少野生動物種「ツシマヤマネコ」の飼育下繁殖に取り組んでおり、2021年3月18日に国内で初めて人工授精による赤ちゃんが誕生していました。
この活動成果が認められ2022年5月27日、日本動物園水族館協会の通常総会において、よこはま動物園は「第36回古賀賞」を受賞しています。授賞理由となった業績は、遺伝的多様性を考慮した飼育下繁殖計画の遂行のために、人工繁殖技術を用いて繁殖に成功したというもの。
ツシマヤマネコの人工授精に遺伝子検査で協力したアニコム ホールディングスによると、ネコ科動物の多くは生理学的・解剖学的特徴などの観点から、動物園で飼育されている動物の中でも最も人工繁殖が難しい部類であると指摘。
今回の取り組みでは、ホルモン剤で卵巣の状態を受精に適した状態にコントロールした上で、腹腔鏡を使って精子を卵管内に直接注入する「腹腔鏡下卵管内人工授精」という、海外でも例が少なく高度な技術を必要とする方法で希少種の人工繁殖に成功。
この手法はツシマヤマネコの人工繁殖に有用である可能性を示すとともに、他の小型ネコ科動物など他の希少種への応用も期待されるほか、その研究をまとめた論文が動物に関する総合学術誌「Animals」に掲載されるなど学術面でも寄与しており、生物多様性の保全に大きく貢献するものとして高く評価されたことが古賀賞の授賞理由として挙げられています。
なお、環境省のツシマヤマネコ飼育下繁殖計画によると、よこはま動物園では令和3年〜4年にかけても人工授精による繁殖の取り組みが予定されています。
<参考>
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