謎の棒の正体とは…?失踪した飼い主を探して旅する猫の物語「貴重な棒を持つネコ」
※追記あり(2021年6月20日)
猫は室内で飼っていても、ふとした拍子に脱走してしまう危険がある動物。
海外では自宅から数千キロ離れた場所で発見されて奇跡の再開を果たした…なんて実話もありますが、迷子になってしまった猫と再開するのはそれほど容易ではありません。
実際、愛猫が行方不明になってしまい、嘆き悲しむ飼い主さんの体験談はたびたび話題になりますが、猫にとっても今までずっと一緒にいた飼い主さんがいなくなるのは、きっと心細くてたまらないはず。
そんな迷子になった猫が、飼い主さんを探すストーリーを描いたのが「貴重な棒を持つネコ」というマンガ。
これは飼い主さんから一本の棒を託された白猫が、帰ってこない飼い主さんを探す旅に出かけるストーリーを描いた作品で、物語はひとりの女性がフーちゃんという白猫に「すぐ戻ってくるからね、ちょっとこの棒、持っていて」と棒を手渡すシーンから始まります。
「とっても貴重な棒だから大事に持っているように」と言い残して去った飼い主さんとの約束を守るため、両手で大事そうに棒を抱えてその場でじっと待っていたフーちゃん。
しかし、いつまでたっても飼い主さんが戻ってくる気配はなく、そのまま時は流れていき……何と2年もの月日が経過。最初は笑顔だったフーちゃんの目からは精気がすっかり失われています。
このまま待っていてもしょうがないと思ったのか、意を決して飼い主さんを探しに出かけるフーちゃん。旅の道中では色んなキャラクターが登場したりハプニングが起こったりしますが、一貫しているのは飼い主さんから託された棒を大事にし続けること。
棒にカラスが止まると威嚇したり、休憩する時も棒を抱えながら眠ったり、棒を使えばりんごが取れそうなのに使わなかったりと、自分の体を犠牲にしながらも飼い主さんの言いつけを守って棒を大事にする姿に胸が締め付けられる一方で、激しい雨が降った時には棒が濡れてしまう面積を少しでも減らそうと縦に持ち替えたところ、逆に雷に打たれてしまったりと、お間抜けな性格が垣間見えて笑ってしまうシーンも。
棒を大事にしながら飼い主さんを探し続けるフーちゃんに、「飼い主さんは一体何処にいるのか?」「本当にその棒、貴重なんだろうか?」と読者も思わず感情移入して巻き込まれていく作品で、ちょっぴり切なくて笑える猫のフーちゃんと仲間たちの日常が描かれています。
悲しげでシュールなストーリーだけど笑える要素も詰まった本作には、未発表作の4コマ漫画や、人間くさいけど破天荒なキャラクターたちが織りなすスピンオフ漫画も収録。
貴重な棒の秘密と旅の行く末にドキドキしながら楽しめる一冊となっています。
※追記(2021年6月20日)
6月22日からは、今年の4月に東京・渋谷で行われた「貴重な棒を持つネコ」出版記念作品展『棒ネコとゆかいな仲間たち』の巡回展を、心斎橋PARCOのギャラリーで開催。書籍化の際に描かれた新作アートをはじめ、作品展のために描き下ろされた限定公開アートが展示されるほか、出版を記念したグッズなども販売されます。
<企画展概要>
期間:2021年6月22日(火)~7月4日(日)
会場:SkiiMa Gallery(心斎橋パルコ 4F)
入場:無料
<参考>
・猫が支配する世界を描いた衝撃のマンガ作品、待望の単行本が発売&作者インタビューも公開
・徳川綱吉がネコになって蘇るニャ!謎の霊力で世の理不尽に立ち向かう物語「猫将軍ツナヨシ」
・180年後の日本は猫の国だった…?少子化の進んだ未来を描いた漫画「2200年ねこの国ニッポン」
(C) Muroki Osushi/bouneko