ネコ好きなピアニストと詩人の共作絵本『ねことワルツを』フジコ・ヘミング×石津ちひろが初コラボ
世界的ピアニストのフジコ・ヘミングさんと、絵本作家の石津ちひろさんによる共作絵本『ねことワルツを』が11月9日に刊行されます。
フジコ・ヘミングさんは、スウェーデン人画家の父と日本人ピアニストの母のもと、ドイツのベルリンで誕生。5歳の時に日本へ移住して母の手ほどきでピアノを始め、東京芸大卒業後に本格的な演奏活動を開始させると、28歳でベルリン音楽学校に留学して優秀な成績で卒業。
その後は長年にわたりヨーロッパに在住して演奏家としてのキャリアを積み、ようやくチャンスを掴みかけていた35歳の時に風邪をこじらせて聴力を失うアクシデントに遭遇。失意の中、耳の治療と音楽学校のピアノ教師を続けながら欧州各地でコンサート活動を行っていましたが、母の死を機に日本へ帰国します。
日本でも演奏活動を続けながら猫と一緒にひっそりと暮らしていたところ、1999年にNHKで放送されたドキュメント番組「フジコ あるピアニストの軌跡」が大反響を呼び、デビューCD「奇蹟のカンパネラ」が200万枚を超える大ヒットを記録。以降は世界各国で演奏活動を行っているほか、絵を描くのも好きで、小さい頃から描き続けているといいます。
一方、愛媛県生まれの石津ちひろさんは、早稲田大学文学部仏文科を卒業後、3年間のフランス滞在を経て、絵本作家や翻訳家、詩人として活躍中。『なぞなぞのたび』でボローニャ児童図書展絵本賞、『あしたうちにねこがくるの』で日本絵本賞、詩集『あしたのあたしはあたらしいあたし』で三越左千夫少年詩賞を受賞しているほか、『くだもの だもの』『おやおや、おやさい』『おかしな おかし』『どきどきキッチンサーカス』『バレエのおけいこ』などの絵本作品や、『あおのじかん』『マイロのスケッチブック』の訳書も手掛けています。
本書はそんなネコ好きの二人が初めてコラボレーションして制作した絵本で、早口ことばや韻を踏んだ詩で猫への愛情を表現した石津さんの文15編と、フジコさんの温かみのある絵が合わさった作品で構成。
中でもタイトルにもなった「ねことワルツを」は、幼き日のフジコさんが父とワルツを踊る喜びと、その後の別れの哀しみを詠んだ詩で、当時の心境を思うと胸に迫るものがあります。
絵本の制作が企画されたのは、出版元の編集者がドキュメンタリー番組の中で紹介されていたフジコさんの絵に魅了されたことがきっかけ。
当初は石津さんが練り上げた文に対して、フジコさんが絵を描くというスタイルで制作を始めたものの、演奏会で世界を飛び回るフジコさんに絵本を描く余裕はなく、しばらくは進展がないまま時が経過。しかし、コロナ禍で演奏会が軒並み中止になり、時間的な余裕が生まれたことから制作を再開。12年の歳月を経てこのたび完成に至ったのだとか。
装丁は小説から経済書まで、2000冊以上の書籍を手掛けているデザイン事務所「コズフィッシュ」の祖父江慎さんと藤井瑶さんが担当。美しく仕上げた情感豊かな絵本作品となっています。
<参考>
・「好き」という気持ちの大切さを教えてくれる、黒猫ミイさんの成長を描いた絵本「バレエのおけいこ」
・猫を探して迷い込んだお屋敷のヒミツとは…?最後にはホッとできる怖い絵本「ばけねこ」
・ねことプレゼント探しの旅に出かけよう!全編リトグラフで描いた絵本「ふしぎなニャーチカ」
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