垂れ耳はなぜネコだけ障害が出やすいのか?驚きの新事実が満載の図鑑「家のネコと野生のネコ」
身近なイエネコと野生ネコを網羅した世界で初めての図鑑「家のネコと野生のネコ」が7月31日にエクスナレッジより刊行されました。
私たちの身近にいるイエネコは約1万年前に野生ネコから枝分かれしてヒトの伴侶となった動物で、その愛くるしい姿は多くの人々を魅了していますが、意外にも大きさや姿は当時からあまり変わっていません。これはイヌやウマのように働く動物として改良されずに生活のパートナーとして生きてきた証で、そのため、今でも野生の姿形や性質を色濃く残しています。
本書は人気のイエネコから絶滅が危惧される野生ネコまで、約90種類にもおよぶネコの特徴や可愛らしい容姿の裏に秘められた真の姿について解説した書籍で、大きく6つの章に分けて構成。
<主な内容>
・家と野生の猫つながり
・ヨーロッパのネコ
・北米のネコ
・アジアのネコ
・アフリカ・中東のネコ
・南米のネコ
ネコの写真と深い知識をベースに、最新の遺伝子・DNAの研究結果なども交えながら、イエネコと野生ネコのさまざまな「真実」について紹介しています。
例えば、「なぜ、折れ耳のイヌは健康で、イエネコだけに障害が出やすいのか?」という謎について解説。
スコティッシュフォールドを代表とするペタンと垂れた耳の猫は、遺伝子の突然変異による軟骨の変化を品種改良によって定着させたもので、遺伝性の関節の病気を発症しやすいことで知られていますが、パグやトイプードルなど犬にも垂れ耳の品種はたくさんいます。しかし垂れ耳の犬は健康で、遺伝性の関節障害が出やすいのはイエネコだけ。
他にもウサギや牛、豚、山羊、羊など耳が垂れている身近な伴侶動物や家畜は存在しますが、その原因は必ずしも人為的に作り出されたものだけでなく、最近の研究では家畜化症候群(=人間に従順な個体を選抜して世代を重ねると、哺乳類は体の形や色、さらには習性さえ変わってしまう現象)による影響を指摘。品種改良によって耳が垂れている訳ではないため遺伝性疾患が出にくいというのです。
一方、イエネコの祖先であるリビアヤマネコはそもそも家畜化されにくい種で、犬のようには繁殖を管理されてこなかった経緯もあって、家畜化症候群による垂れ耳化はまだ起きていません。つまり、品種改良による垂れ耳しか存在しないため遺伝性疾患が出やすく、未だに野生の姿と性質を色濃く残していると考えられるのだとか。
本書ではその他にも、ネコに関する驚きの新事実が続々と登場。
「世界中の黒猫は1匹のネコから始まった」「ネズミ対策係のイエネコのライバルはフェレットだった」「むかし、日本列島にはオオヤマネコが棲んでいた」といったルーツにまつわるものや、「イエネコの走るスピードは時速48㎞」「時速112㎞。年々速くなるチーターの最高速度」など身体能力にかかわるもの、さらには「なぜ白猫の耳には障害が出るのか」「ネコの柄は成長とともに風船の模様のように膨らむ」「トラの毛を刈ると、肌に同じ虎柄が浮かび上がる」「ジャガーは人間を襲わない」といった事柄まで、ネコ好きな人には気になるテーマを写真と共に詳しく解説しています。
各ページは思わず見とれてしまうような美しいネコの写真で構成されていて、写真集のようにパラパラと眺めて楽しむこともできるほか、本書のコンセプトが「身近にあるイエネコの野性から自然の大切さを考える」であることから、野生ネコにおいては殆どの種で子猫の写真や子育ての様子が掲載されているのも特徴的。
野生ネコの自然観察図鑑としても、イエネコの写真集としても、自然科学の読み物としても楽しめる一冊となっています。
画像提供:X-KNOWLEDGE CO.,LTD.