百人一首の歌をひと言で表現すると…?猫のイラスト付きで学べる解説本「5文字で百人一首」

学校の教材になったりマンガの題材になったりと、何かと目にする機会のある百人一首。

百人一首かるたのイメージ写真
「かるた」でお馴染み

百人一首は今から800年くらい前にまとめられた和歌集で、飛鳥時代から鎌倉時代初期までの代表的な歌人100名の優れた和歌を一人一首ずつ集めて作られたもの。歌の文字は昔の歴史的仮名遣いで書かれているため意味が分かりづらく、数も全部で100個あり覚えるのが大変なことから、難解なイメージを持つ人も少なくありません。

そんな百人一首を「5文字」に圧縮して、可愛い猫のイラストと共に解説した書籍が登場しました。

百人一首の解説本「5文字で百人一首」表紙イメージ
表紙イメージ

百人一首の解説本と聞くと、これまた難解そうな気もしますが、本書ではまず最初に、歌のページごとに大きく書かれた「5文字の言葉」をチェック。

頭に情景が浮かんだところで横のイラストを見ると、どんなことを詠んだ歌なのか大まかにイメージすることができます。

紀友則の和歌の解説ページ by 5文字で百人一首
左端の5文字で和歌を表現

そこで歌についての状況を知りたくなったら、右隣に書かれている「意訳」を読み、さらに歌自体に興味がわいたら右下に書かれた「解説」を読むと、和歌の詠まれた背景などを知ることができる構成になっています。

基本的には大きな文字から小さな文字へ順番に読んで行くと、その歌を深堀りできるようになっているため、自分が興味を持ったところまで読めばOK。

全てのページを隅から隅まで読む必要がないので、気に入った歌だけサクサクと読み進めていくことができます。

赤染衛門の和歌の解説ページ by 5文字で百人一首
左から右へと読むと分かりやすい
壬生忠見の和歌の解説ページ by 5文字で百人一首
どんな歌なのか一目瞭然

百人一首の歌を「5文字」に圧縮するまでの過程が分かるのも本書の特徴で、原文と訳を比較しながら読むことが可能。例えば人気漫画や映画のタイトルにもなった「ちはやふる」。その元になった百人一首を5文字で表す過程はこんな感じになります。

1. 元の歌
「ちはやぶる 神代も聞かず 竜田川 からくれなゐに 水くくるとは」

2. 現代語に直訳
「神々の時代の話としても聞いたことがありません。竜田川の水が唐紅色にくくり染めされるなんて」

3. 自然な表現に意訳
「こんな見事な紅葉は、今まで無かった」

4. 5文字に要約
「空前の紅葉」

同様に、他の有名な百人一首の歌も、以下のような5文字で簡潔に表現。

◆春過ぎて 夏来にけらし 白妙の 衣干すてふ 天の香具山 
→洗濯日和だ

◆天つ風 雲の通ひ路 吹きとぢよ 乙女の姿 しばしとどめむ
→アンコール

◆ひさかたの 光のどけき 春の日に しづ心なく 花の散るらむ
→桜散るの早

◆淡路島 かよふ千鳥の 鳴く声に いく夜寝ざめぬ 須磨の関守
→鳥うるさい

◆玉の緒よ 絶えなば絶えね ながらへば 忍ぶることの 弱りもぞする
→つらい死ぬ

難しい昔の歌も、現代風の5文字なら理解するのは簡単で、歌の意味が分かれば当時の人々や情景にも親近感がわいてきそうですよね。

また、百人一首の訳に添えられたイラストには、ネコ好きな著者による「ねこあるある」な要素が盛り込まれており、読んでいて飽きない構成になっているほか、かわいい猫ちゃんが歌の内容を豆知識とともにゆる〜く解説。

「ちはやふる」の歌の場合は以下のように解説されています。

ちはやぶる 神代も聞かず 竜田川 からくれなゐに 水くくるとは

神様の時代にもなかったぐらい、竜田川が紅葉でいっぱいになったという歌。紅葉の屏風絵の前で想像で詠んだもの。「ちはやぶる」は「神」にかかる枕詞。「水くくる」の意味は、「水を絞り染めにする」と、「水が紅葉の下を潜る」の二つの説がある。とにかくすごい紅葉だ。「紅葉」と言わずにそれを表現しており、聞く人の想像力を試される歌でもある。落語やマンガのタイトルになったりして、百人一首の中でも何かと有名。作者の在原業平は、歌が上手ですごくもてた。物語の主人公のモデルにもなった。

その他にも、歌が詠まれた場所マップや、「枕詞」「序詞」「掛詞」の違い、昔使われていた月や時間帯を一覧にした知識コラムなども収録されているため、「これはどこで詠まれた歌なんだろう?」「有明の月ってなんだったっけ?」「歌を詠んでいる人同士の関係性は?」といった疑問も解消することが可能。

百人一首の人物の関係性や六歌仙についての解説ページ by 5文字で百人一首
猫のイラストで分かりやすい♪

百人一首の歌の意味が5文字で分かり、猫の絵を楽しみながら自分のペースで学べる新感覚な一冊となっています。

書名:5文字で百人一首
著者:すとうけんたろう
出版:講談社
発売:2021年5月25日

<参考>
猫や犬だけじゃない!江戸時代に描かれた動物画160点を収録した書籍「浮世絵動物園 」
ネコが人生の役に立つ名言をゆる~く解説!哲学入門書『考えない猫が教える脱力系哲学の言葉』
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