虫を飲み込んだネコのおはなし、名作絵本『スイッチョ猫』の新装版が登場!挿絵の原画パネル展も開催

猫を愛した作家・大佛次郎(おさらぎ じろう)のロングセラー童話絵本『スイッチョ猫』の新装版が7月上旬に刊行。それを記念した原画パネル展なども開催されています。

新装版『スイッチョ猫(挿絵・朝倉摂)』の表紙イメージ
新装版『スイッチョ猫』表紙イメージ

明治30年生まれの大佛次郎は、『鞍馬天狗』『赤穂浪士』『パリ燃ゆ』などの小説作品で知られる国民的作家。

大佛次郎の肖像写真
大佛次郎(1897〜1973)

75年の生涯を通じて時代小説や現代小説をはじめ、ノンフィクション、新作歌舞伎、童話など多彩なジャンルの作品を残した一方で、家の中では常に10匹以上の猫がたむろしていたと言われており、「私の家に住んだ猫の数は五百匹に余る」と語ったほどの愛猫家。

猫について書いた読み物も60編ほどあり、その中でも、虫を飲み込んでしまって大変な目にあった子猫の物語『スイッチョねこ』は、大佛次郎自ら「私の一大傑作」と呼んだ名作として知られています。

もともとは1946年に童話として発表された『スイッチョねこ』。当時の挿絵は昭和期の洋画家・猪熊弦一郎の手によるもので、1970年代には童画家の安泰(やすたい)版と、画家・舞台美術家として活躍した朝倉摂(あさくらせつ)版の2種類が絵本として登場。

これまで多くの人々に読み継がれてきましたが、やがて朝倉摂の挿画は廃版となり、現在では手に取れる機会が非常に少なくなっていました。

絵本『スイッチョ猫(挿絵・安泰)』の表紙イメージ
『スイッチョねこ』画:安泰

そんな『スイッチョねこ』の童話誕生から76年を迎えた今年、ついに朝倉摂・挿画の新装版が刊行。大佛次郎の叙情豊かな文章を、やわらかく、瑞々しいタッチで描き出しています。

虫を食べてみようと思い立つ白猫 by 新装版『スイッチョ猫(挿絵・朝倉摂)』
虫を食べてみようと思い立つ白吉

お腹の虫がうるさくて仲間はずれにされてしまう白猫 by 新装版『スイッチョ猫(挿絵・朝倉摂)』
お腹の虫がうるさくて仲間はずれに…
もう虫を食べないと誓った白猫 by 新装版『スイッチョ猫(挿絵・朝倉摂)』
もう虫を食べるのは懲り懲りニャ

<ストーリー>
秋の庭から、いろいろな虫の声が聞こえてきます。
子ねこの白吉は、こんなにきれいな声で歌う虫は、きっと美味しいに違いないと考えます。食べたくて仕方がありません。
白吉は虫をとろうとしますが、失敗をくりかえし、夜が更けていきます。そのうち、眠くなってきます。

大きなあくびをした、 その時、口の中に飛び込んできたなにかをまるのみにしてしまいます。 すると、 お腹の中から、「スーイッチョ!」と大きな声が聞こえてきて……。
夏に生まれた子ねこたちが、思わぬ出来事に遭遇しながら、はじめての秋を過ごします。

書名:スイッチョねこ
文 :大佛次郎
絵 :朝倉摂
仕様:A4判/40ページ
出版:青幻舎
発売:2022年7月上旬

また、新装版の刊行と同時に、安泰(やすたい)・画の『スイッチョねこ』も重版されたことを記念して、横浜にある大佛次郎記念館では「スイッチョねこ祭り」を夏休み期間中に開催。

大佛次郎記念館 外観イメージ
大佛次郎記念館

2種類の絵本『スイッチョねこ』の世界を紹介する「原画パネル展」や、実際に本を手に取って楽しめる「絵本特集コーナー」、小学生以下を対象にした子ども向け「ねこクイズラリー」、大人向けのねこ謎解き「猫からの挑戦状」などのイベントが企画されているほか、大佛家の猫たちのエピソードを紹介する展示や、QRコードを読み取って『スイッチョねこ』の朗読音声を聞くことができる仕掛けなども。

その他にも同館では、期間中に絵本を購入すると、大佛次郎記念館オリジナルのねこ写真ポストカードをプレゼントしてもらえる特典が用意されています。

<イベント概要>
名称:スイッチョねこ祭り
期間:2022年7月15日(金)~8月21日(日)
時間:10:00~17:00
休館:月曜(休日の場合は翌平日)
会場:大佛次郎記念館
住所:神奈川県横浜市中区山手町113

<参考>
もしも飼い猫が人間になったら…?猫と過ごす夢のような一日を描いた児童書「ねこのふくびき」
家出した猫はどこに行くのか?謎に包まれた空白の時間を描いた絵本「なぁなぁ、あそぼ!〜」
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