猫と浮世絵から楽しく学ぶ、国芳一門の猫絵図鑑 おもちゃ絵
幕末から明治期に描かれた子供向けの浮世絵「おもちゃ絵」の作品を解説した「国芳一門の猫絵図鑑 おもちゃ絵」が小学館から発売されています。
国芳一門と猫
書籍のタイトルに「国芳一門」とありますが、浮世絵師の中で特に無類の猫好きであったのが歌川国芳(くによし)で、常に数匹の猫を飼っていて、猫を抱えながら浮世絵を制作していたと言われるほどの猫好きだったそうです。
また、国芳は自らが描くだけなく、自分の門弟たちにも猫を描くのを勧めていたため、歌川国芳の一門は猫の浮世絵を多く残しています。
おもちゃ絵とは
一方、「おもちゃ絵」とは、幕末から明治中期にかけて作られた「子ども向きの浮世絵」のことです。
読み物や漫画、図鑑的な情報をはじめ、切ったり組み立てたりして遊ぶものや、双六、着せ替え人形などもあり、玩具として大きな位置を占めていたことから、「おもちゃ絵」と呼ばれていますが、遊びそのものを楽しみながら、日常生活に必要な知識を身につけることのできる教育用の教材でもありました。
その中でも人気が高かったと言われるのが猫のおもちゃ絵です。
本書のみどころ
本書ではそんな「おもちゃ絵」を42枚取り上げて紹介しています。
構成は「ねこライフ」「ねこビル」「ねこストリート」「ねこレジャー」「ねこシアター」「ねこvsネズミ」といった章立てになっていて、現代人の視点から理解しやすい造りになっています。
■蕎麦屋
■スパリゾート
浮世絵に書かれた読みづらい文字には現代語の翻訳が記されていたり、作品に簡単な解説が書かれたりしているので、浮世絵の文字や解説を読みながら作品を楽しむことができる構成になっています。
本書では歌川国芳のほかにも弟子たちの作品が多く取り上げられており、特に注目なのが「歌川芳藤(よしふじ)」の作品。アイデア・画力ともに抜群ながら、子ども向きのおもちゃ絵であっても手を抜かない丁寧な仕事ぶりから、「おもちゃ芳藤」とも呼ばれていたそうです。この本で最も多いのも芳藤の作品となっています。
また、お風呂に入ったり、勉強したり、料理に舌鼓を打ったりする猫たちの姿やしぐさを通して、当時の子どもの遊びや人気のあった職業、さらには流入してきた西洋文化によって変化しつつある生活や風俗の様子などをうかがい知ることができるのも見どころのひとつです。
最近では、「猫まみれ展」や「あそぶ浮世絵 ねこづくし」など、猫が描かれた浮世絵の展示会が全国各地でたびたび開催されていますが、本書における解説からは展示会とはまた違った示唆を与えてくれそうです。
Amazonでは単行本のほかKindle版も販売されていますが、那珂川町馬頭広重美術館などでも購入することができます。
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