死んだ愛猫にもう一度だけ会いたい、そんな切ない願いに寄り添う感動の再会ストーリーを描いた絵本『ただいまねこ』
猫を飼っている人にとって、長年暮らしてきた愛猫との死別はとても辛いもの。死んだ後もその愛情が変わることはなく、幽霊になってでも構わないから、もう一度再会したいと願う人も少なくありません。
そんなこの世から旅立ってしまった猫が、飼い主と再会する感動物語を描いたのが先月刊行された『ただいまねこ』という絵本。
本書の主人公は、黒白のハチワレ猫「ちびた」。
普通の猫のように、毎日ごろごろと、おだやかな日々を送っていました。
そんなある日のこと、仲間の猫が「きょうは、年に一度のおうちに帰る日だよ」と、言い出しました。訳がわからないまま渡された三角の布を頭に巻くと、ちびたは思い出します。
自分は「あかりちゃん」という女の子の家で暮らしていた猫で、毎日一緒に遊んだりゴロゴロしたりしながら、彼女の家族たちとかけがえのない時間を過ごし、年老いたある日、死を迎えたことを──。
猫は言葉を話すことができないので、どんな気持ちで一緒に暮らしていたのか、人間である飼い主には分かりません。しかし、触れ合っている時の表情や仕草を見ていると、言葉を交わさなくても心が通じ合っているような気がして、「自分と過ごした時間が猫にとって幸せであって欲しい」「自分のことを大切な存在だと思っていて欲しい」という思いが芽生えてきます。
本書ではそんな思いに応えるかのうように、この世に戻り飼い主の元へと会いに行くストーリーが、死んでしまった猫の視点で展開。
お盆の時期になると見かける精霊馬(キュウリを馬に見立てて作る飾り物)に乗ってお家へ向かうユニークなシーンが描かれているほか、ちびたが、あかりちゃんに「ただいま」とささやくシーンは、再会した喜びに満ち溢れていて、猫と暮らしたことがある人には琴線に触れるものがあります。
著者はイラストレーターで絵本作家としても活動しているミヤザーナツさん(旧作家名:宮澤ナツ)。
これまでに『らったくんのばんごはん』『がんばれ、なみちゃん!』『でんしゃにのるよ ひとりでのるよ』などの絵本作品でイラストを担当していますが、本作は8年前に愛猫を亡くした経験がベースになっていて、お盆の時期にこんな風に帰ってきてほしいと思って描いたイラストを元に物語を制作。
大切なペットや家族を亡くした子どもや大人に、優しい絵と言葉で寄り添ってくれるほか、教育現場で注目されているデス・エデュケーション(死を通してよりよく生きることを考える教育)にも適した一冊となっています。
<参考>
・もしも飼い猫が人間になったら…?猫と過ごす夢のような一日を描いた児童書「ねこのふくびき」
・家出した猫はどこに行くのか?謎に包まれた空白の時間を描いた絵本「なぁなぁ、あそぼ!〜」
・猫を探して迷い込んだお屋敷のヒミツとは…?最後にはホッとできる怖い絵本「ばけねこ」
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