希少種の繁殖に取り組むノンフィクション「ツシマヤマネコ飼育員物語」

ツシマヤマネコの繁殖に取り組む奮闘ぶりを紹介する書籍、「ツシマヤマネコ飼育員物語 動物園から野生復帰をめざして」が10月11日に刊行されました。

書籍「ツシマヤマネコ飼育員物語 動物園から野生復帰をめざして」

本書は動物園などの飼育員、獣医師たちがツシマヤマネコの繁殖に向けた奮闘ぶりを紹介する、はじめての児童書。

ツシマヤマネコは、額の縦じまや、胴長短足でしっぽが太いといった特徴を持ち、とても愛くるしい容姿をしていますが、野生の個体は長崎県の対馬に100頭未満しか生息していないと推測されており、国の天然記念物にも指定されている絶滅の危機に瀕した動物です。

ツシマヤマネコのイメージ写真(環境省対馬野生生物保護センター提供)提供:環境省対馬野生生物保護センター

日本では全国10の施設で飼育されていますが、2017年5月時点でその数はわずか35頭。そこで、動物園などの施設が協力してツシマヤマネコを繁殖し、対馬の野生に返す取り組みが進められています。

その拠点のひとつが、京都市動物園。


同園ではツシマヤマネコに子供を産ませて増やそうと、3頭のツシマヤマネコが飼育されていましたが、新たに生まれた赤ちゃんたちを加えて現在は5頭。

京都市動物園で誕生したツシマヤマネコの赤ちゃん2頭2017年05月15日に誕生した2頭

動物園の職員でさえ勝手に入ることができない扉の奥で暮らしています。

本書では、そんな同園の飼育員や獣医師たちが一丸となって取り組んでいる繁殖への挑戦と奮闘ぶりを、徹底した取材をもとに書きおろしたノンフィクションストーリーです。

著者は、1960年京都市生まれの児童文学作家、キム・ファン氏。

「人と生き物の共生」をテーマに創作活動に取り組み、日韓で多数の書籍を執筆。2006年には「サクラ-日本から韓国へと渡ったゾウたちの物語」で、第一回子どものための感動ノンフィクション大賞最優秀作品に選出。紙芝居「カヤネズミのおかあさん」で、第54回五山賞を受賞。巣箱の起源とその楽しみ方を描いた絵本作品「すばこ」が、第63回青少年読書感想文全国コンクールの課題図書(小学校低学年)選ばれるなど、絵本作家や児童文学作家として活躍しています。

解説は、京都市動物園副園長の坂本英房氏。ツシマヤマネコの現在の様子とともに、未来を見据えた動物園のさらなる挑戦について語られているほか、飼育員として日々ツシマヤマネコの飼育に携わっているタカギナオコ氏が絵を担当。飼育員ならではの視点で、ツシマヤマネコの生態をユーモラスにあたたかく描き出しています。

そんな本書に登場するツシマヤマネコの子ども2頭はこれまで、園内にある非公開の繁殖施設で飼育されてきましたが、2017年10月11日~11月12日の1ヶ月間は、京都市動物園「もうじゅうワールド」のツシマヤマネコ展示施設にて、期間限定で特別公開されています。

京都市動物園のツシマヤマネコ

ツシマヤマネコの子どもを見る機会というのは、そう多くはありません。

全国の動物園にいるツシマヤマネコは、その子孫を残すことを主な目的として飼育されていますが、実は園が所有しているのではなく環境省から預かっている形になっているのだとか。

そのため、この先もずっと同じ場所で暮らしていくとは限らないことから、移動を含め様々な環境に慣らす必要があること、繁殖の役割を終えると将来的に展示にまわることもあり得ることから小さい時に経験させておくため、そして多くの人々に絶滅の危機に瀕しているツシマヤマネコの存在を知ってもらいたい、といった理由から子ネコながら一般公開されています。

そして、1ヶ月間の展示期間を過ぎると、2頭は非公開の繁殖施設で飼育することになるため、再び見られなくなってしまいます。

興味のある方は本書を手にとってみたり、特別展示に足を運んでみてはいかがでしょうか。

出典:prw.kyodonews.jp

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