猫が長生きできる住まいを徹底解説!雑誌・建築知識の最新号がネコ特集
建築月刊誌・建築知識の2018年2月号では、「20歳までネコが元気に長生きできる住まい」をテーマに丸ごと一冊ネコ特集が組まれています。
「建築知識」は今年創刊60年を迎える雑誌で、実に読者の9割近くが1級建築士などの建築専門家ですが、最新号では、猫を飼っている人にも見逃せない内容が目白押しとなっています。
現在、室内で飼われている猫の平均寿命は15歳程度と言われていますが、本特集では猫が心身ともに健康なまま、寿命を5年延ばすために住宅設計ができることについて徹底解説。
猫の寿命を延ばすために重要なことは「猫のやる気と満足度を持続的に高めること」であるとし、自然環境に近い状態を再現することで飼育動物たちの生活の質を高める「環境エンリッチメント」という概念をもとに、猫が健康で長生きするための様々な住宅設計術が収録されています。
1章では「部位別で分かる猫の長生き住まい」をテーマに17の項目をピックアップ。例えば「温かさや明るさを選ばせて長生き!」の項目では、快適な高さや移動手段、中庭周りの居場所、エアコンの風温問題など、猫の五感を刺激することで長生きに繋がる方法として、具体的な設計事例をいくつか解説しています。
4コマ漫画やイラストを用いながら解説されているので読んでいて分かりやすいほか、設計事例は細かい寸法入りの図面付きで掲載されているため、実際に行動に移そうと思った場合に参考にしやすい構成になっているのが特徴です。
続く2章では「細部までこだわる猫の長生き住まい」をテーマに9つの項目について解説。
「猫と人のドアは使い分けが重要」の項目では、キッチンや階段など猫が入っては困る場所に扉を設置して立入禁止にする方法を提案しており、猫が入りにくい引き戸の作り方や、猫に開けられない鍵の掛け方など、建築の専門知識を活かしたアイディアが詳しく解説されています。
このような住宅設計事例がたくさん載っているのは一見参考になりそうですが、猫にはそれぞれ性格や好みがあるため、果たして自分が良いと思った方法が愛猫に適したものなのかどうか、飼い主さんにとっては判断が難しいところですよね。
本書では、行動パターンなどから猫を6つのタイプに分類する「猫の本質チャート」が掲載されており、簡単なチャートに沿って選択肢を選ぶだけで、愛猫がどのタイプに属する猫なのかを簡単に把握することが可能。
そして各設計事例には、どのタイプの猫に適した施策なのかがひと目で分かるレーダーチャートが記載されているので、飼い主さんの視点だけでなく、猫ごとの個性を考慮して検討できるようになっているのも本書の大きな特徴です。
最後の3章では、「毎日できる猫の健康管理と防災」について、猫専門医による病気を早期に発見するコツや健康管理方法なども紹介。人が快適に過ごせるだけでなく、猫の心身の健康に十分配慮した住宅設計の新しい常識が詰め込まれた一冊となっています。
さて、今回ご紹介した建築知識の最新号ですが、実は同誌の2017年1月でも「猫のための家づくり」をテーマにした特集号が発刊されていました。そこで当編集部では、出版元であるエクスナレッジ社の方(以下、担当編集者)に、昨年のネコ特集との違いや今号の制作秘話などについてうかがってみました。
猫特集 第1弾との違いは?
担当編集者:第2弾は内容の差別化を図るため、獣医師をはじめ猫の行動学者などの専門家の皆様に取材をしていたところ「環境エンリッチメント」というワードにたどり着きました。
「環境エンリッチメント」とは、動物園や住宅など人工的な環境で過ごす動物に対して、ストレス軽減と問題行動の予防を目的に、野生に近い環境を用意してあげる取り組みです。
日本では動物園での導入に留まっていますが、海外では人と共に暮らすペットに向けて導入されつつあることから、環境エンリッチメントについて書かれたアメリカ獣医師学会の論文をいくつか読んで勉強を重ねた結果、家猫が問題行動を起こしてしまう背景には本能的な行動をとる機会が不足している、ということが分かりました。
つまり環境エンリッチメントの手法を用いて、家の中に本能的な行動を存分にできる場所や機会を建築的に作ってあげることで、ストレスは解消され、問題行動も減り、結果として人も猫も幸せに暮らせる。これは面白い考え方だと思い、この方向性で企画を進めていくことになりました。
(次ページへ続く)
次ページ:制作秘話 続き(家で猫の野生を満足させる工夫、猫のタイプ分類の仕組み等)
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