建築知識2018年2月号(ネコ特集) 担当編集者が語る制作秘話

前ページに続き、建築知識のネコ特集「20歳までネコが元気に長生きできる住まい」について、担当編集者の方による制作秘話をご紹介します。


実際の家で猫の野生を満足させる方法とは?

担当編集者:室内で暮らす猫は行動範囲に制限がかけられるも反面、身の安全を保障され、毎日満足できる量の食事を定時にもらうことができます。人と暮らす猫なら当たり前に受けている恩恵ですが、野生にそんな環境はありえません。

そこで誌面では、キャットステップを可動式にして時に高さを変えてみる、通風孔をあえて猫の居場所付近に設けて外部の臭いをかがせてみるなど、単調な日常に刺激を与えるための工夫を多数掲載しています。より自然な環境に近づくように、樹木のかたちをそのまま生かしてキャットタワーを作った事例も掲載しています。

誌面の細かな部分は、京都大学の霊長類研究所での研究を経て、日本の動物園での環境エンリッチメントの普及に努められた落合知美先生に監修をお願いしました。

各家庭の猫にぴったりな提案をする方法とは?

担当編集者:環境エンリッチメントに根ざした様々な建築的な工夫を紹介しているのですが、獣医師も研究者も「猫が暮らす環境として一般的に良いとされるものを取り入れても、その効果は個体差がある」と、口をそろえておっしゃっていました。

そこで、猫を6つのタイプに分け、それぞれのタイプと本編で紹介する事例のマッチング度を掲載することで、愛猫にぴったりの家づくりをしていただけるように工夫しています。ですので、愛猫がどのタイプに当てはまるか、イエスノーチャートで判定してから読んでいただくことをおすすめします(タイプ別に当てはまりやすい猫種も掲載しています)。これらは、京大の猫研究グループのみなさまに監修していただきました。

猫の性格は、同じ猫種でも結構差があるそうです。たとえばラグドールは6つのタイプのうち「カメタイプ」に当てはまることが多いのですが、イエスノーチャートで愛猫のラグドールのタイプを判定してみたら、「イヌタイプ」だった!ということも出てくると思います。

かわいい4コマ漫画について

担当編集者:設計者はもちろん、一般の愛猫家の方にも読んでいただきたく、ページの目立つ位置に4コマ漫画を入れることにしました。お願いした秋本尚美さん、上田惣子さん、Simicoさん、卵山玉子さんの4人の漫画家さんは、実際ネコを飼った経験をお持ちの愛猫家です。

誌面の内容をお伝えして、ご自身のエピソードなども交えつつ描いてください、とざっくりしたお願いだったのですが、とてもかわいく仕上げてくださって……。誌面制作期間中は、4人の漫画家さんのイラストに、すさんだ心が大いに癒されました。誌面に即したお役立ちネタが、愛猫家なら思わずうなずくエピソードとともに4コマ化されています。

発売後の反響をうけて

担当編集者:第2弾ですし、みなさまもう飽きてしまったかな……と不安だったのですが、非常によく売れております。ネット書店は発売後2週間でほぼ完売状態です。

設計者ではない方が発信してくださっているからかもしれませんが、事例を紹介しているページ以上に、猫の健康管理のページに関するコメントが多いですね。健康管理のページでは、猫にはどんな病気があって、日々の暮らしのなかでどんなところ(体の部位や排泄物)をチェックすれば、異変に気づいてあげられるかなどのチェックポイントを紹介しています。

建築には直結しない面もありますが、猫に長生きしてもらうためには欠かせない項目ですので、1章分を割いています。この章に嬉しいコメントをいただけたことに、少し驚きつつも、愛猫家のみなさまの熱意を感じました。この部分の監修は獣医師の白岩千鶴子先生です。

今後について

担当編集者:今回の特集で紹介した「環境エンリッチメント」もそうですが、住宅で暮らす動物に対して、海外では標準になりつつある考え方でも、日本には浸透していないものがまだまだあるのかな、と思っています。日本の住宅で暮らす猫がもっと幸せになれる秘訣が見つけられたら、第3弾もあり、かもしれません。

2ページにわたって建築知識2018年2月号(ネコ特集)をご紹介してきましたが、一般的な雑誌のネコ特集や猫の飼育本などでは見られない、建築雑誌ならではのアイディアが詰まった濃い内容となっていましたね。

猫を飼っている人、特に引っ越しやリフォームを検討している人は参考にしてみてはいかがでしょうか。

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