古代エジプトから現代まで、猫と人が歩んだ4000年の歴史を紐解く書籍「猫の世界史」

※追記あり(2018年4月3日)

古代エジプトから現代まで、猫と人が歩んだ4000年にわたる歴史を紐解く書籍「猫の世界史」が今月出版されます。

書籍「猫の世界史」

今や日本に限らず世界中で愛されるペットとして不動の地位を築いている猫ですが、実はそこまでの道のりは長くとても厳しいものでした。

家族の一員として可愛がられた猫もいれば、単なるネズミ捕りとして飼われた猫、身近だからと苛められた猫など、その扱いは猫の置かれた環境や時代によって大きく異なりますが、本書ではそんな猫たちが歩んできた山あり谷ありの歴史を、猫が登場する文学や伝承、映画などから紐解いていきます。

<目次>
1章 ヤマネコからイエネコへ
2章 災いをもたらす猫、幸運を呼ぶ猫
3章 ペットとしての猫
4章 女性は猫、あるいは猫は女性
5章 猫には、猫なりの権利がある
6章 矛盾こそ魅力

書籍「猫の世界史」の第1章 ヤマネコからイエネコへ1章 ヤマネコからイエネコへ

特に猫はさまざまな絵画に多く描かれており、本書では大の猫好きとして知られる浮世絵師・歌川国芳をはじめ、フランスの画家「ジャン=バプティスト・ペロノー」や「ピエール=オーギュスト・ルノワール」、イタリアの画家「フランチェスコ・バッキアッカ」や「ジョヴァンニ・ランフランコ」など、芸術家たちが描いた作品から猫が当時どのような存在として捉えられていたのか、その一端を垣間見ることができます。

歌川国芳、ジャン=バプティスト・ペロノーが描いた猫の作品 by 猫の世界史歌川国芳/ジャン=バプティスト・ペロノー

ピエール・オーギュスト・ルノワール、、フランチェスコ・バッキアッカ、ジョヴァンニ・ランフランコが描いた猫の作品 by 猫の世界史ピエール=オーギュスト・ルノワール/フランチェスコ・バッキアッカ/ジョヴァンニ・ランフランコ

書籍・猫の世界史の中身アレクサンドル=フランソワ・デポルト

その他にも猫好きなら知っておきたい豆知識が満載。

源氏物語は猫のせいでドロドロの三角関係に陥った!?

最後の晩餐にちゃっかり参加した猫がいる!?

映画「ティファニーで朝食を」に登場した猫は何もしていないのにすごい賞を受賞した!?

などなど、世界中の猫にまつわるトリビアもたくさん収録されています。

本書の著者は、作家で編集者のキャサリン・M・ロジャース氏。ニューヨーク市立大学ブルックリン校および大学院センター名誉教授で、18~19世紀の英文学研究に従事したのち、退官後は動物や食物関連の多くの書籍を執筆。日本でも過去に「豚肉の歴史(2015年/原書房)」などの書籍が翻訳されて出版されています。

愛される猫、嫌われる猫、可愛らしい猫、したたかな猫、化ける猫、騙す猫、苛められる猫、義理堅い猫などなど、さまざまな側面を持つ猫が人間と歩んできた4000年の物語に触れてみてはいかがでしょうか。


※追記(2018年4月3日)

「猫の世界史」は3月末にすでに発売されましたが、Cat Press編集部では出版元であるエクスナレッジ社の方(以下、担当編集者)に、本書の企画背景や制作秘話などについてうかがってみました。

——本書の出版を企画した経緯を教えてください

担当編集者:日本国内では民話や伝承、文学などを通じて、猫がどのように捉えられていたのかをうかがい知ることができる書籍はいくつかあるのですが、国外では猫がどのような存在であったのかについて書かれた本は、実はあまり多くありませんでした。

例えば、古代エジプトで猫が可愛がられていたという話は有名ですが、そこから現代に至るまでの猫が歩んできた道を紹介する本はほとんどなかったのです。そこで、文学や伝承、絵画などを中心に猫が人間とどんな関係を結んできたのかを適度にまとめた書籍が出版できればと考えました。

——特に印象に残った点はありましたか?

担当編集者:想像以上に「猫は虐げられてきた」ということです。
中世のヨーロッパでは魔女や悪魔の使いと考えられて火あぶりにされたり、貢物として差し出されたりと、猫好きな人からすると可哀想!と思うような扱いが多々ありました。

しかしながら、そのような状況下でも猫を愛する人はいて、そうした人々によって影から、時には堂々と支えられて今のような世界中で愛されるペットの地位を得たわけです。本書の編集を通じてそうした経緯を知り、なおさら猫が愛おしくなりましたので、ネコ好きな読者の皆さんもきっと似たような思いを抱くのではないかと思います。

——日本との違いは感じましたか?

担当編集者:西洋と比べると日本は昔から猫好きの人が多かったのだという印象を持ちました。本書では更級日記や源氏物語など、平安時代の文学に登場する猫を紹介していますが、どちらかというと好意的に描かれています。江戸時代には化け物として描かれることもありましたが、総じて見るとわれわれ日本人の猫好きは祖先譲りなのではないかと感じられます。

——読者へのメッセージをお願いします

担当編集者:日本に限らず人間の猫に対する見方というのは、場所や時代が変わればさまざまであったことがよく分かります。それを紐解くカギとして、世界中の猫が登場する文学や絵画がたくさん出てきますので、本書を通じて他の猫作品を読んだり見たりするきっかけになってくれたら嬉しいですね。

書名:猫の世界史
著者:キャサリン・M・ロジャース(Katharine M. Rogers)
翻訳:渡辺智
定価:1,600円
ISBN:978-4-7678-2441-3

画像提供:X-KNOWLEDGE CO.,LTD.

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