猫と日本人の1300年におよぶ関わり合い、歴史で猫の足跡をたどる書籍「猫の日本史」
1,000年以上におよぶ猫と日本人との関わりをたどった書籍、「猫の日本史」が先月発売されました。
日本史における「猫の希薄さ」を著者が指摘するところから始まる本書は、残された数少ない文献や記録などから、当時における猫の暮らしや猫と関わる人々の交流を考察し、猫が古代より日本の人々に愛されてきたことが描き出されている一冊。
全3章からなる本書の1章では、日本史上において猫が記録された最古の書物と言われる宇多天皇(867年〜931年)の猫日記から始まり、清少納言の枕草子では天皇に愛でられる猫や、更級日記に登場する不思議な猫など、歴史上の文献から猫や猫を取り巻く環境を読み解いていきます。
2章は中世や戦乱の時代に焦点を当てており、権力者の変遷によって猫の扱いや飼われ方が変わっていくなど、猫の自由と苦難が描かれているほか、3章では徳川幕府によってもたらされた太平の世を謳歌する猫たちの暮らしぶりが明らかになります。
また本書では、歴史上の著名な人物と猫とのエピソードがたくさん盛り込まれているのが特徴で、太閤秀吉の愛猫が迷子になってしまい捜索を命じられた奉行が身代わりの猫を仕立て上げる説や、鹿児島にある猫神と呼ばれる祠(ほこら)と戦国時代の武将・島津義弘が朝鮮出兵に猫を同行させた事との関連性についてなど、さまざまなエピソードについての考察が語られています。
さらに江戸時代では、滝沢馬琴の日記や俳句、当時の物語などのさまざまな資料から当時の猫ライフが細かく解説されており、現代のような猫トイレがすでに存在していたことや、猫のノミ取り専門の業者がいたり、家族として大切にされた猫の死に際してはお墓が作られていたりと、現代に負けず劣らず、猫を可愛がっていた人々の姿が目に浮かんできます。
本書の著者は、「だれが信長を殺したのか」や「島津義久 九州全土を席巻した智将」などの書籍で知られる、作家・歴史研究家の桐野作人さん。
自身も猫好きであるという桐野さんが、その時代その時代における猫が通った道を丁寧にたどって綴られた本書は、歴史上の出来事や人物が持つ従来のイメージとは違った、新たな一面に気づかせてくれる一冊となっています。
猫好きな人や歴史好きな人は、手にとってみてはいかがでしょうか。
書籍:猫の日本史
発売:2017年1月11日
出版:洋泉社
頁数:288ページ
(C) 洋泉社