猫はどのように愛され動物になったのか?日本の歴史で紐解く書籍『猫が歩いた近現代』

猫は可愛らしい見た目や鳴き声、仕草、性格など、有り余るほどの魅力で私たち人間を癒やしてくれる愛すべき存在で、日本では愛玩動物(ペット)として最も多く飼育されている動物。

文献として残っている記録は古く、平安時代には宇多天皇(867年〜931年)の日記に登場するなど昔から日本人の身近に暮らしてきた動物ですが、いつの時代も猫が可愛がられていた……という訳ではありませんでした。

物憂げな茶トラ猫の横顔イメージ写真
猫の歴史にも陰がある

特に明治維新以降、急速な近代化を遂げて、戦争、敗戦、復興と激動の時代を駆け抜けてきた日本の近現代史。人々の傍らには猫がいたものの、歴史と共に語られることは多くありません。

そんな、猫と日本人との関わりについて、さまざまなエピソードを交えて描いたのが『猫が歩いた近現代―化け猫が家族になるまで―』という書籍。

日本の近現代における猫と人間の関係を描いた書籍『猫が歩いた近現代―化け猫が家族になるまで―』表紙イメージ
表紙イメージ

本書では江戸時代に「化ける・祟る」など、恐ろしいイメージを持たれることもあった猫が、どのようにして現在の愛されキャラとしての地位を獲得していったのかに着目。

幕末や明治初期をはじめ、震災や戦争、戦後復興と高度成長、さらには高度成長の終焉以降まで、日本の近現代における猫と人間との関係性に迫った書籍で、ネズミの駆除役として重宝されたり文筆家たちに愛された一方で、戦中には軍用毛皮として供出されたり戦時戦後には食糧難による猫食いが行われるなど、苦難の路を辿った猫たちへのまなざしの変化が描かれています。

書籍『猫が歩いた近現代―化け猫が家族になるまで―』の第二章、近代猫イメージの誕生―猫が「主役」になるまで
第二章 近代猫イメージの誕生

【目次】

「猫の歴史」を考える意味―プロローグ

第一章 猫の「夜明け前」―前近代の猫イメージ
 1. 猫の「明治維新」と江戸の「猫ブーム」
 2. 明治初期の猫認識

第二章 近代猫イメージの誕生―猫が「主役」になるまで
 1. 明治の文筆家たちと猫
 2. 絵画における「猫の近代」の成立

第三章 国家が起こした「猫ブーム」―猫の三日天下
 1. 「猫畜」を飼え!の大号令
 2. 「猫イラズ」と猫捕り

第四章 猫の地位向上と苦難―動物愛護と震災・戦争
 1. 虐待と愛護のはざまで
 2. 震災・戦争と猫

第五章 猫の戦後復興と高度成長―猫の「ベビーブーム」
 1. 「猫食い」の密行から戦後復興へ
 2. 猫文化勃興と猫の社会問題化

第六章 現代猫生活の成立へ―高度成長終焉以降
 1. 猫生活の劇的変化の時代
 2. 慢性的「猫ブーム」の光と影
 3. 「社会の一員」としての猫

猫の近代/猫の現代とはなにか―エピローグ

書籍『猫が歩いた近現代―化け猫が家族になるまで―』の第3章 国家が起こした猫ブーム
第三章 国家が起こした猫ブーム

著者は歴史学者で早稲田大学文学学術院教授の真辺将之氏。

本書の刊行特別企画として出版元の吉川弘文館では、2021年6月22日までキャンペーンが行われていて、Twitterアカウント(@yk_sales)のキャンペーン投稿に猫の写真を付けて引用ツイートすると、1投稿につき22円が猫のボランティア団体へ寄付されます。

書名:猫が歩いた近現代―化け猫が家族になるまで―
著者:真辺将之
体裁:A5判・並製・カバー装・232頁
出版:吉川弘文館
発売:2021年5月26日(水)

<参考>
猫と日本人の1300年におよぶ関わり合い、歴史で猫の足跡をたどる書籍「猫の日本史」
猫はいつ日本にやってきて、どんな存在だったのか?歴史と共にたどる書籍「猫づくし日本史」
古代エジプトから現代まで、猫と人が歩んだ4000年の歴史を紐解く書籍「猫の世界史」

最近の投稿