新刊紹介「大佛次郎と猫」、500匹の猫と暮らした昭和の文豪

猫を愛した作家・大佛次郎(おさらぎ じろう)のエピソードや所蔵品などを収録した書籍、「大佛次郎と猫」が2月17日に発売されました。

書籍「大佛次郎と猫」の表紙

大佛次郎は鞍馬天狗シリーズや赤穂浪士、パリ燃ゆ、天皇の世紀などの作品で知られる国民的作家ですが、家には常に10匹以上の猫がたむろしていて、一緒に住んだ猫の数は500匹を超えると言われるほど猫好きな作家としても知られています。

猫にまつわる読み物は60編ほど残していて、随筆集「猫のいる日々」や、童話「スイッチョねこ」は今なお多くの人々に読まれているロングセラーです。

本書は、そんな彼が収集した猫の人形や絵など、300点にものぼる所蔵品の中から厳選し、心温まるエッセイや猫の写真と共に収録した書籍。大佛自身、猫は趣味で飼っているのではなく生活になくてはならない伴侶だと述べていますが、読み進めるに連れてその真意が伝わってくる内容となっています。

書籍「大佛次郎と猫」の目次

4章で構成されている本書のうち1章では、さまざまなエピソードを交えながら大佛家の「猫との暮らし」が紹介されています。

散歩の度に捨て猫がいれば拾ってきてしまうほどの猫好きだった大佛次郎は、近所に猫好きなことが知れ渡っていたため、敷地内に勝手に猫が捨てられていることも多かったと言います。また捨てられた猫を奥さんが拾ってしまうため猫の数がどんどん増えていき、たまりかねた大佛は一度に猫を飼う数は15匹までと定員を設けるまでに。

たくさんの猫が暮らしていた大佛次郎の家

またある時は、風呂に入ろうとすると浴槽の蓋の上に猫が寝ていたため、「おい、どけよ」と語りかけるのですが、一向にどく気配がないと分かると、桶に湯を汲んで自らの身体に浴びはじめ、温まったら湯船に浸からず浴室から出ていってしまいます。

猫が居心地良さそうに蓋の上で暖まっているところを無理にどかすのは忍びない、という心境は、猫好きな人であれば共感してしまう方も少なくないのではないかと思いますが、そんな心がほっこりしてしまうようなエピソードがいくつも綴られています。

ジオラマ風の猫の風呂屋、吉田永光作「猫の湯屋」本書収録 吉田永光作:猫の湯屋

一方で、猫の飼育方法に関してはきっちりしていたのが大佛家。

「15匹の定員制」もさることながら、食事の種類や与え方、寝床に入る時間などはしっかり取り決められていたほか、トイレは常に清潔に保ち、ノミや回虫などの駆除を行うなど、衛生面や健康面まで配慮して(主に奥さんですが)お世話をしていた様子が述べられています。

大佛次郎の妻、酉子夫人による猫の飼い方論

2章では一緒に暮らした猫のうち、何匹かの猫について個別にエピソードを交えて紹介。大佛家で飼われていた猫の多くは雑種ですが、意外にもシャム猫を飼っていた時期があり、日本猫との違いやシャム猫への想いなどが綴られています。

3章では大佛次郎の童話「スイッチョねこ」が生まれたきっかけや自身の作品への想いが語られています。「スイッチョねこ」の原画なども掲載されているので、幼いころに読んだことがある人は懐かしく感じられることでしょう。

4章には、とある縁で大佛次郎のもとに譲られた、猫の浮世絵やおもちゃ絵(子供たちが遊ぶために描かれた浮世絵)などの作品が収録されています。

おもちゃ絵「志ん板猫の湯」おもちゃ絵 「志ん板猫の湯」

江戸から明治にかけて描かれた作品がオールカラーの解説つきで掲載されており、パラパラと眺めているだけでも楽しめますが、当時の暮らしぶりや風習などに擬人化した猫を通じて触れることができます。

そして最後の裏表紙には、嬉しそうに食事中の猫を眺める大佛次郎の姿が。

食事中の猫を嬉しそうに眺める大佛次郎、書籍「大佛次郎と猫」の裏表紙

読み終えるころには、500匹もの猫とたくさんの猫にまつわるコレクションに囲まれて暮らした、大佛次郎の猫愛がたっぷりと感じられる一冊となっています。

さて、そんな大佛次郎ですが、今年は生誕から120年を迎えます。

折しも、22日からは横浜にある大佛次郎記念館で「大佛次郎×猫の写真展」が始まりました。本人が収集した猫のコレクションも数多く展示されていますので、本書を手に取った方や興味を持った方はぜひ訪れてみてはいかがでしょうか。

(C) Shogakukan Inc.

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